自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆ゆっくり多様化する日本のシンボル

2021年07月24日 | ⇒ニュース走査

   前回の東京オリンピックは1964年に開催された。自身がちょうど10歳で、ものごころが付いた時期なので、鮮明ではないにしろ、印象に残っている場面もいくつかある。このオリンピックを視聴するために、我が家ではそれまでの白黒テレビをカラーテレビに買い替えた。なので、入場行進のとき、日本選手団は赤の上着にズボンやスカートは白だったことも印象に残っている。「東洋の魔女」と呼ばれていた女子バレーボールチームが当時のソビエトに勝って金メダルを獲得した時は、カラーテレビを持っていなかった近所の人たちも見に来ていて、いっしょになって「よっしゃ、よっしゃ」と喜びを分かち合った記憶も脳裏の片すみにある。

   当時はカラー化と同時に、見せる技術としてスローVTRが導入されて、勝敗を決めた決定的な瞬間をゆっくり繰り返すことで視聴者の視覚と心に訴えた。現在ではスポーツ番組でスローVTRは当たり前のシーンだが、当時は画期的だった。では、今回の東京オリンピックのテレビの最新技術とは何だろう。国際映像を供給する五輪放送サービス(OBS)はインテルなどと協力し、仮想現実(VR)や人工知能(AI)を使い、陸上短距離で選手がどの瞬間に最高速度に達したかを表示する新技術も導入するという。アスリートに小型センサーをつけて選手の心拍数も視聴者に伝えという試みもある(7月10日付・共同通信Web版)。「新たな視聴体験」として、見るだけではなく、アスリートの肉体に接近することで競技の醍醐味をよりリアルに感じとることができるようだ。楽しみだ。

   きのう午後8時からの開会式を点火式が終わるまでNHKテレビで見た。印象に残るシーンをいくつか。序盤に、入場行進が始まる前のカウンドダウンがあり、最後のゼロはなんと新国立競技場が上空から映し出された。確かに空から見ると「0」に見えるのだ。ある意味でだじゃれなのだが、相当凝ったスケールの大きな演出ではある。

   ミーシャーが「君が代」を歌い終え、各国選手団による入場行進が始まる。旗手を先頭に和やかな表情で小旗を振りながら、もう一つの手にはスマホを携える選手も多くいた。57年前の整然としたイメージの行進ではなく、世紀前という時代の流れを感じさせる。それぞれの国の衣装も面白い。色とデザインの派手さでカメルーンだろうか。そして、意外と工夫を凝らしたのイタリアで、三色の国旗を丸いデザインで表現していた。日本の国旗をイメージしているのだろう。マスクにも工夫のあるものが多かった。

   最終点火者を務めたのはテニスの大坂なおみ選手だった。なんとなく予感はしていた。大坂選手がツイッターで、全仏オープンの記者会見を拒否し、6月2日予定の2回戦を棄権すると明らかにしたことが波紋を広げていた。その後、全英オープンも欠場し、東京オリンピックには出場の意向を示していた(6月18日付・BBCニュースWeb版日本語)。おそらくこのころすでに最終点火者の打診があったのだろう。大坂選手は24日未明のツイッターで「Undoubtedly the greatest athletic achievement and honor I will ever have in my life.」(意訳:間違いなく、今後の人生の中で、アスリートとして最も名誉なこと)と投稿している=写真=。

   そして、日本選手団の旗手を務めたのはバスケットボールだった八村塁選手だった。日本のプロスポーツを代表し、世界で活躍する2人。開会式での2人の姿は、ゆっくりと多様性が増している日本を象徴する「出来事」かもしれない。

⇒24日(土)朝・金沢の天気   はれ


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