自在コラム

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★トランプ流タックル

2018年05月25日 | ⇒ニュース走査
    私は株主でも株式投資家でもないが、居住地である石川県に本社を置く石川製作所の株価を時折チェックしている。昨日(24日)は開始の9時過ぎに見て、日経平均が全体が軟調だったのに、石川製作所は100円も上がっていた。どれだけ上げるのかと思いながらパソコンを離れ、2時間ほど後にチェックすると前日の終値(2365円)付近に戻っていた。それからは下がり続け、終値は前日比105円安だった。損得の感情は一切ないが、これまで同株価をウオッチしてきた経験から「何か起きる」と少々予感があった。

    同社は追尾型の機雷を製造する、いわゆる防衛関連株だ。昨年9月にアメリカのトランプ大統領が国連総会の演説で金正恩・朝鮮労働党委員長を「ロケットマン」と呼び、双方の言葉の応酬が過熱した10月にかけては最高値4205円(10月16日)を記録した。が、平昌オリリンピックへの北朝鮮の参加による平和ムードが広がり、徐々に株価は下がり、3月29日に韓国と北朝鮮による南北首脳会談(4月27日)が決定すると1943円に落ちた。その後は、「平   和の演出」のにおいが感じられるようになり、最近では米朝首脳会談の「中止」「延期」のメッセージが発せられ同株価は上向きに転じた。日本の防衛関連株は朝鮮半島をめぐる国際政治や外交のホットな動きと連動していて、目を逸らせない。

    完全に潮目が変わった。昨日、トランプ氏が金正恩党委員長に会談中止の書簡を送ったと発表し、その書簡の全文を公開した=写真=。ポイントはここだろう。

I was very much looking forward to being there with you. Sadly, based on the tremendous anger and open hostility displayed in your most recent statement, I feel it is inappropriate, at this time, to have this long-planned meeting. Therefore, please let this letter serve to represent that the Singapore summit, for the good of both parties, but to the detriment of the world, will not take place. You talk about your nuclear capabilities, but ours are so massive and powerfu1l that I pray to God they will never have to be used.(私はシンガポールで貴方と会うことを楽しみにしていた。残念なことに、貴方の直近の声明にあった強い憤りとむき出しの敵意を鑑みると、長い間計画していた会談を今開くことは不適当だと、私は考えている。そのため、この手紙をもって、双方(アメリカと北朝鮮)にとっては良いことで、世界にとっては不利益ではあるが、シンガポール会談は行わないことをお知らせする。貴方は自国の核能力について語っているが、我々の核能力は大規模かつ強大であり、使わなければならない時が来ないよう祈っている)

    米朝会談の開催は即決だったが、中止もこれまた実にスピード感がある。アメリカンフットボールのような試合運びだ。そして、前文を読めば、決定的な乖離を感じさせるが、最後の締めくくりには期待感も感じさせる。

If you change your mind having to do with this most important summit, please do not hesitate to call me or write. The world, and North Korea in particular, has lost a great opportunity for lasting peace and great prosperity and wealth. This missed opportunity is a truly sad moment in history.(もし貴方の考えが変わり、この重要な会談をしようと思うなら、遠慮なく私に電話をするか、手紙を書いてほしい。世界、とくに北朝鮮は、恒久平和や大いなる繁栄、裕福さを得る素晴らしい機会を失った。こうして失われた機会は歴史上、非常に悲しい時である)

    要は相手側の司令塔であるQB(クォーターバック)の判断力や戦略に揺さぶりをかけるトランプ流タックルではないか。脅し、誉め、叩(はた)く。これまで韓国の文在寅大統領や中国の習近平国家主席と会うなど機動力を見せてきた金委員長は次にどのような一手を打ってくるのか。きょうの石川製作所の株価の値動きが見ものだ。

⇒25日(金)朝・金沢の天気     はれ 

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