自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★小麦高騰、ならば米粉スイーツやパンはいかがか

2022年06月18日 | ⇒トレンド探査

   テレビでなどでよく見るウクライナの国旗の、あの青と黄のツートンカラーは上が青空で、下が麦畑をシンボル化したものと有名になった。ウクライナは小麦の生産国で、FAOの統計(FAOSTAT、2020年版)によると生産・輸出量ともに、EU、ロシア、アメリカ、カナダに次いで世界第5位の「小麦大国」でもある。そのウクライナがロシアによる侵攻で黒海が閉ざされ、小麦輸出ができなくなったことから、各国が小麦の買い占めに走り、世界の小麦価格が高騰している。

   農水省公式サイト「輸入小麦の政府売渡価格の改定について」によると、もともと去年夏の高温・乾燥でアメリカやカナダ産の小麦が不作だったのに加え、ロシアの輸出規制、ウクライナ侵攻で小麦の国際価格が上昇した。このため、農水省は輸入小麦の政府売渡価格を17.3%引き上げている(4月期)。パンやスイーツ、うどん・ラーメンなど麺の原料はほぼ100%が輸入小麦となっている。スイーツはアメリカ産、あの讃岐うどんもオーストラリア産に頼っている。

   この輸入小麦の政府売渡価格引き上げについて、金子農水大臣の記者会見(3月11日)が気になった。記者から「(小麦の)価格がちょっと上がった場合でも、お米で代替できるというようなお考えでしょうか」と質問された。これに対し、大臣は「米を食べてもらいたいという気持ちはあるけれども、やっぱり、パンの業界もあればいろんな業界の方もいらっしゃいますから、そういう方の立場を考えると、こういう厳しいときに、改めて、私どもで、いろいろと、米を、というのは、やっぱり控えなければいけないかなと私は思いますけど」と答えている(農水省公式サイト)。実に煮え切らない返答だった。

   むしろ、もっと米を活用すべきと答えてもよかったのではないだろうか。パテシエの辻口博啓氏を金沢大学の講義に招いて直接聞いた話だ。米粉を使ったスイーツが好評で、パンケーキやロール、バウムクーヘン、シフォン、タルトなど種類も豊富。当初、職人仲間から「スイーツは小麦粉でつくるもので、米粉は邪道だ」と言われた。それでも米粉のスイーツにこだわったのは、小麦アレルギーのためにスイーツを食べたくても食べれない人が大勢いることに気が付いたからだとの説明だった。

   小麦アレルギーの人たちのためにスイーツだけでなく、いまでは米粉によるパンや麺など多様な食材が開発されている。小麦の高騰をチャンスに、日本では余っている米の活用をこうした米粉食品の市場開拓へと広げてはどうだろうか。金子大臣にはそう答えてほしかった。いまからでも遅くはない。

(※写真は、米粉でつくるスイーツを紹介した単行本『辻口博啓のやさしい、お菓子』ソニーマガジンズ)」

⇒18日(土)夜・金沢の天気     くもり

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