
話は前後するが、初詣をした金沢神社の隣に兼六園管理事務所がある。事務所横の庭には、まだ背の低い松などが植えてあり、雪つりまで施してある。本来ならば、兼けんろ六園の園外であり、名木でもないのにコスト

そのときのために名木の子孫がスタンバイしているのである。これは兼六園管理事務所の関係者から聞いた話だが、子孫とは、たとえば種子からとることもあるが、名木のもともとの産地から姿の似た名木をもってくる場合もある。兼六園きっての名木「唐崎(からさき)の松」。これは、滋賀県大津市の「唐崎の松」から由来する。歌川広重(安藤広重)が浮世絵「近江八景之内 唐崎夜雨」に描いた松である。その唐崎の松は2代目だが、第13代加賀藩主が2代目の種を取り寄せて植えた松が兼六園の「唐崎の松」である。
兼六園管理事務所では、滋賀県の唐崎の2代目の種子で成長した低木を譲り受け、管理事務所で育てている=写真・下=。若いが枝振りもよい。これならば雪つりを施す価値があると個人的にも思う。ただ、この子孫の出番はいつか分からない。100年後か200年後か。ただ、名木の2世のスタンバイは永遠という時空をつけている。兼六園は四季の移ろいを樹木などの植物によって感じさせ、それを曲水の流れや、玉砂利の感触を得ながら確かめるという、5感を満たす感性の高い空間なのだ。その空間に永遠という時空をつけて、完成させた壮大な芸術品、それが兼六園。
⇒1日(水)夜・金沢の天気 くもり