蕎麦前で憩う

お蕎麦屋さんで蕎麦前をいただきながら憩いの一時を過ごさせていただきました。

『総本家・更科堀井@麻布十番』さんの「そば寿司」

2013-11-30 23:56:18 | 東京23区(港区)

「藪」、「砂場」と並ぶ江戸蕎麦3大系列のひとつ「更科」。

この「更科」という蕎麦は、寛政2年(1790年)に信州の織物行商人が麻布永坂町(現在の麻布十番あたり)に「信州更科蕎麦所・布屋太兵衛」という蕎麦屋を創業したのがその始まりとされています。

そして今日、麻布十番にあるその直系店の『総本家・更科堀井』さんへうちの奥さんと2人で訪れてみました。
インターネットで事前に調べてみると、いつも混雑しているようなので開店時間少し前に到着してみましたが、開店を待つお客さんはおらず、「開店時間に来れば空いているんだ。」なんて思っていると、タクシーで来店するお客さんがいるなどポツポツと集まりだし、自分では並んでいたつもりはありませんでしたが、いつの間にか多数のお客さんが自分達の後ろに並んでいて、その人気の高さに驚きです。

開店時間となり、1番客でお店に入ると大勢の花番さんが笑顔で迎えてくれ、「こちらどうぞ!。」と4人掛けのテーブル席を進めてくれます。お言葉に甘えて4人掛けのテーブル席に2人で座り、蕎麦だけを注文するお客さんが多数いる中、「赤坂生ビール」と一緒に「玉子焼」と「豚のかえし煮」と「そば寿司」をお願いします。


「赤坂生ビール」という予想外に美味しい生ビールを飲みながら店内を見渡すと、相席用の大きなテープル席を中心に2人掛けと4人掛けのテーブル席が多数あり、更には座敷も多くそれなりに席数がありますが、その多くが既に埋まっている状態で、賑わっている様子が伺えます。

そんな賑わっている様子を少々驚きながら眺めていると、綺麗な「そば寿司」が目の前に置かれます。

まずは「へ~!。」と驚き。
過去にいただいた「そば寿司」の海苔巻きは、その全てが普通の二八蕎麦で作った海苔巻き(そもそも更科蕎麦のお店でそば寿司をいただいたことがありませんが。)ですが、こちらの『総本家・更科堀井』さんの海苔巻きは更科蕎麦で作った海苔巻きで、まるで炊き立ての新米で作ったかのように白く輝いています。

その海苔巻きをボロボロこぼさないようにパクリと一口でいただいてみると、歯応えを感じながらも柔らかい食感と大人しい味わいがとても美味しいです。また、いなり寿司も更科蕎麦のいなり寿司で、控え目ないなり寿司らしい味わいがとても美味しく、最初の料理から満足感の高い料理となりました。


次に運ばれて来た「玉子焼」。
見た目も中も均一の黄色で美しく、フワッとした軽い口当たりの、薄味ながらも明確に甘い「玉子焼」で、予め醤油(?)を吸わせてある大根おろしと一緒に美味しくいただきました。


「玉子焼」をいただいている最中に生ビールが無くなったのでお酒をお願いします。
別メニューの日本酒もありましたが、「お店が定番としている日本酒」をいただこうと思い、メニューの最初にあった福島県の地酒「純米吟醸・名倉山」をお願いします。

すると、「飲み方はどうしますか?。」と花番さんに聞かれたので、「冷(ひや)で。」と答えると「常温ですね?。」と確認されましたが、その一言に「美味しく飲んで行ってほしい。」という気遣いが感じられます。
「燗(かん)」と言えば「温めた熱いお酒」と誰もが想像しますが、「冷(ひや)」と言うと「冷たく冷したお酒」を想像する方もいるのではないかと思います。しかし、それは「冷酒(れいしゅ)」であって「冷(ひや)」は「常温のお酒」と解釈するのが正しいのではないかと思います。そのようなことから、「冷酒を頼んだつもりなのに常温のお酒が出てきた。」とならないよう、「常温ですね?。」と確認するのは必要かつ正しい確認と思います。

そして最後に運ばれて来た「豚のかえし煮」。
簡単に言うと「豚肉の角煮」ではありますが、脂っこく無く、うちの奥さんから「どうやって作るとこうなる?。」という言葉が出るほど柔らかい、口の中でとろけてしまいそうな胃にも優しい一品です。


今回は2人で料理をいただいているということもあって、もう少し料理を食べることの出来る腹具合ではありますが、蕎麦を楽しみたいという思いがあったことから料理は追加せず、蕎麦をお願いします。
席を待っているお客さんが店内に列を作っている状況でもあるし・・・。

ということで、再びメニューを広げて蕎麦を選びます。
当初は、食べたことの無い「柿の葉切りそば」という季節の変わりそばをいただこうかと思いましたが、更科蕎麦の老舗蕎麦屋に来ているので、やはり基本の更科蕎麦をいただくことにします。
また、以前から「花まき」を老舗蕎麦屋で食べてみたいと思っていたことから、出す順番とタイミングをお願いすることが出来るか確認し、うちの奥さんが選んだ「かけ」と一緒に、「さらしなそば」と「花まき」を「更科を先&声掛けで花巻」でお願いすることにしました。

まずは「さらしなそば」。
更科蕎麦の特長といえば、蕎麦の実の芯だけを使った更科粉で打っていることによるその「白さ」と思いますが、今までにいただいた更科蕎麦の中で一番の白さではないかと思います。
早速、その「さらしなそば」を上品な「あまくち汁」(甘い蕎麦汁)に付けていただいてみると、冷たくサッパリしていて、歯応え良し、喉越し良しの実に美味しい蕎麦で、何も言うことがありません。


そして温かい蕎麦に海苔を振り掛けた「花まき」。
運ばれて来た「花まき」は、運んでくる間に海苔(磯)の香りが逃げないよう木蓋付きの器で登場し、薬味は山葵のみという基本形に則った「花まき」です。


まずは蓋を取って、閉じ込められていた海苔の香りを楽しみます。
次に海苔だけを食べてみると、フンワリした海苔の味わいがとても良い感じです。


そして、今度は汁を吸ってしんなりした海苔と蕎麦を一緒にいただいてみると、海苔の風味をタップリ味わいながら蕎麦をいただくことができ、とても美味しいです。多くの場合、「せいろ」をいただいていますが、「蕎麦を楽しみながら美味しくいただく」という点では癖になりそうな美味しい食べ方ではないかと思います。
ちなみに、「花まき」には生海苔を使用した物と焼海苔を使用した物とがありますが、『総本家・更科堀井』さんの「花まき」は手でちぎった焼海苔を使用していました。


今日、美味しい蕎麦前と蕎麦をいただいた『総本家・更科堀井』さんは、麻布十番というお洒落な街にある老舗のお蕎麦屋さんではありますが、庶民的で気さくな雰囲気のお蕎麦屋さんでした。

また、常に席を待つお客さんが列を作っている状況にも関わらず、接客に当たっている花番さん達はバタバタすることもなく、食事中のお客さんに対しても席を待っているお客さんに対しても、温かみの感じられる手慣れた対応で、なかなか心地良い高い満足感を得ることの出来るお蕎麦屋さんでした。

ごちそうさまでした。