デラシネ日誌

私の本業の仕事ぶりと、日々感じたことをデイリーで紹介します。
毎日に近いかたちで更新をしていくつもりです。

奥松島物語第2号

2014-03-29 12:54:20 | 買った本・読んだ本
書名「奥松島物語第2号」
責任編集 西脇千瀬 発行 荒蝦夷
西脇さんと松川さんが中心となった奥松島物語プロジェクトが編集した地域に残る歴史・文化・民俗を後世に伝えようという意図でつくられた地域誌の第2号。80ページほどのそんなに厚くない雑誌であるが、中身は実に濃い。震災後多くの犠牲を出した地域がこれからどういう道を歩むべきなのか、それに対するひとつのヒントがここにある。
震災と津波で多大な被害を受けた奥松島でいまこうした冊子をつくるという中にどんな意義があるのだろうと思う人もあるいはいるかもしれない。しかしこれを読めば、いまだからこそこうした視点から地域の歴史・文化を見つめることがいかに大事かということを知ることになるだろう。その意味で赤坂憲雄さんと対談している縄文館の名誉館長の岡村さんが「土地に染みついた歴史を掘り起こすのが考古学の大きな仕事」と語り、「土地に染みついた地霊を思い、歴史を言い伝えていくことが、とても大切だ」といっているのが、強い印象に残った。縄文時代の人々の住居が津波の被害にあっていないということは偶然ではないのである。この対談の最後で岡村さんが紹介しているエピソート、津波のあと避難所に行くと、知り合いが「俺達、歴史とか縄文とか何も興味なかったけど、今回は歴史に救われた、縄文に救われた」と言っていたという話がそれを裏付けている。
さらに本書には現在の縄文館の館長である菅原さんが、詳細に縄文遺跡に残る災害痕跡について書いている。このふたつの対談と論考の意義はとても大きい。ぜひたくさんの人に読んでもらいたい。
いま高い防波堤をつくるのが果たして津波を逃れることになるのかという論議があるが、役人の発想の限界というか、自然に勝とう、あるいは逃れようということばかりにとらわれているような気がしてならない。縄文人のように自然と共生するという道こそ、我々が災害から身を財産を守ることになるのではないかというこをおらためて思った。
震災後の水辺の生態を追った永幡のレポートや、きゅきゅと浜辺を歩くと鳴る砂浜をずっと調査してきた早川さんの室浜の鳴り砂のレポートを読むと、ここにこそ復興の道しるべがあるような気がしてならなかった。
手前味噌だが、私もここの出身であるふたりの漂流民儀兵衛と太十郎についてエッセイを書いた。こういうご縁もできたので、私もできる限りこのプロジェクトと関わっていきたいと思っている。
おそらく5月になるかと思うが、今回の「奥松島物語第2号」発刊を記念したイベントを奥松島でやりたいと思っている、それはこの本をたくさんの人たちに読んでもらいたいということもあるし、西脇さんと松川さんの趣旨を広めていきたいと思うからに他ならない。
この冊子はほんとうにたくさんの人に読んでもらいたい。

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