デラシネ日誌

私の本業の仕事ぶりと、日々感じたことをデイリーで紹介します。
毎日に近いかたちで更新をしていくつもりです。

円生と志ん生

2005-02-08 13:40:10 | 観覧雑記帳
作品名 「円生と志生」
原作  井上ひさし  出演 角野卓造 辻満長ほか
観覧日 2005年2月7日  公演時間 およそ2時間40分
会場  紀伊国屋ホール

待望久しかった井上ひさしの新作。井上がずっとこだわり続けている戦争と庶民のテーマ。舞台はまたしても大連。終戦を大連で迎えた、若かりしふたりの落語界の巨匠の600日の大連での生活を追う。戦後の大連という、自分にとってはいまやっている長谷川濬の戦後とも重なるとても魅惑的な時代・舞台背景があったのかもしれないが、最初から舞台に引き込まれた。時には笑い、時には涙を浮かべながら、ほんとうに楽しく観賞させてもらった。戦争と庶民というテーマとは別に、「笑い」ということ、それに殉じる芸人という視点から、ずいぶんと考えさせられることも多々あった。戯曲が本になったら、ぜひまた読みたいと思う。まだ整理がつかないので、見終わって気になったことを、アトランダムにメモとして残しておきたい。

1 語り継がれる笑いの芸へのいとおしさ。旅館を追い出された円生と志生が転がり込む花街で、そして志ん生がキリストと間違えられて、一騒動おこす修道院で、歌われる歌が印象に残った。また聞かせてくださいよ、あの面白い話を、という内容なのだったと思うのだが、娼婦たちにも修道女たちにも楽しませる、落語という力をもった芸、それがひとを「笑わせ、楽しませる」芸であった。笑いの芸の強さ、たくましさ、そしてそれを受け入れる大衆。
1 小話とコント。未来のふたりの巨匠は、さまざまな苦労をしながら終戦後の大連を生き延びる。そのなかで芸の鍛練にもつとめるわけだが、ここで小話こそが、落語にとっては大事だということに気づく。かつて井上ひさしは、浅草のストリップ小屋でコントを書きつづけたわけだが、こうしたコントが、のちの彼の傑作戯曲へと繋がっていく。いつか井上がチェーホフのことを書いたエッセイのなかでも、チェーホフにとって初期のヴォードビルがいかに大切だったかを語っていた。井上のドラマトゥルギーを考えるうえでも、面白かったのだが、クラウンニングを考える時にも、非常に参考になる視点であった。
1 小話と聖書。修道院の場は、ほんとうにおかしかったが、そのなかで、円生と志ん生が小話を競い合うのを小耳にはさむ修道女が、そのひとつひとつが聖書の一節と合致すると指摘、それが騒動のもとになるのだが、この指摘は興味深い。聖なるものと笑いの接点。
1 笑いの力。この問題が一番大きい。ひとを笑わせてどうなるの、その意義はということを問い詰めている芝居だと思う。笑う力をもった人たちがいる限り、笑わせようと懸命になる芸人がいてもいい。むしろ庶民が笑う力を失ってしまうこと、それがどれだけおそろしいことなのか。

このところよくクラウニングのことを考えることが多いのだが、それに対するひとつのヒントとなった芝居かもしれない。
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鴬谷探訪

2005-02-08 11:25:48 | お仕事日誌
どうもキエフで転んだ尾てい骨の痛みが抜けない。横断歩道を走ろうとした、痛みがひどくなる。医者に行ってもしかたがないだろうし、おとなしくしているしかないのだろう。出社してみたら机の上にFAX。昨日送った覚書についての返事、内容を見て、ちょっと青ざめる。いきなり難題だよなあ。
カバキネの件のリハの件で、出演者と連絡をとる。いろいろ決まらないことがあって、不完全燃焼状態が続く。
キエフのイーゴリからメール、こちらの質問にまったく答えていない意味不明な内容。どうしちゃったのだろう。
16時鴬谷で、照明のMちゃんと、舞台のTさんと待ち合わせ。キネマ倶楽部の下見。照明の仕込みは結構たいへんみたいだ。いろいろ頭の痛いことがある。
せっかく鴬谷でやるのだから、飲み屋を探訪しようということになり、ラブホテル街を通って、線路沿いのホッピー屋でまず軽く一杯。大阪から東京に転勤になったMさんも呼び出し、軽くが、かなり重い一杯になる。そのあとずっと気になっていたスター東京の裏にある迷路のような飲み屋街にも寄ってみる。なかなかデープな感じの飲み屋さんだった。それぞれチラシを置いてもらう。反対方向に行く、ふたりと別れ、品川方面行きの山手線に乗ったのだが、気づいたら渋谷まで来てしまった。あわてて戻るも、京急の最終は出たあと、結局京浜東北で新杉田へ出て、タクシーで帰宅。かなり飲んでしまった。

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