ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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[政治まみれの平昌五輪] アイスダンス韓国ペアの使用曲「独りアリラン」の大きな問題点にも注目を!

2018-02-26 05:12:37 | 韓国の時事関係(政治・経済・社会等)
 昨日幕を閉じた平昌冬季五輪。政治がらみのネタが例の北朝鮮との合同チームの問題をはじめ開催前からいろいろ報じられてきました。その北朝鮮選手や大物政治家たち、そして例の女性応援団たちの来韓をめぐる報道等については私ヌルボも興味を持って接し、中には疑問を抱いたりしたものもありました。(その件については別記事で書くかも。)

 開会式でとくに話題となったあの人面鳥にも文在寅政権の政治的意図があったと思われることは、郵便学者・内藤陽介さんのブログ記事(→コチラ)に記されています。つまり、人面鳥のモトは高句麗古墳の壁画ですが、その具体的には北朝鮮の北西部・南浦(ナムポ)市徳興里(トクフンリ)壁画古墳や、(あの高句麗広開土王碑がある)中国吉林省集安の将軍塚古墳。ということで、廬武鉉大統領の時中国との間で問題となった「高句麗の歴史」は「中国史の一部なのか韓国史に含まれるか?」をめぐる中韓間の歴史戦争に関連しての韓国側の主張が込められている、ということです。

 そして、本論です。フィギュアスケート・アイスダンスの韓国ペア、ミン・ユラ、アレクサンダー・ガメリン組がフリーで用いた曲「独りアリラン(홀로 아리랑.ホロアリラン)」中の歌詞の中に当初あった「独島」の部分を、事前に韓国スケート連盟が国際スケート連盟と話し合って消して流すことになった、ということについてです。
 その経緯等については、J-CASTニュース(→コチラ)に比較的詳しく書かれています。しかし、概してそんなに大きく報じられていないのではないでしょうか? 共同通信の記事(→コチラ)や時事通信の記事(→コチラ)では、この「独りアリラン」のことを民謡の「アリラン」と書いています。日本でもおなじみの韓国の代表的民謡で、韓国語の歌詞をご存知の方で「独島なんて言葉はなかったはずだが」と疑問を持った方はいたと思いますが、その語の削除が決まってるのなら問題ないんじゃないの?という受け止め方だったのではないでしょうか?
 ところが、実は「独りアリラン」は民謡の「アリラン」ではないのです。フォーク歌手のハンドル(한돌)が作詞・作曲して1989年に発表した歌ですが、翌90年に同名タイトルのCDを出したソ・ユソク(서유석)の持ち歌として知られてきたようです。とりあえず彼の歌で聴いてみてください。

 有名な民謡「アリラン」は、各地でさまざまな歌詞とメロディーで歌われています。「珍島アリラン」、「密陽アリラン」等々。この「独りアリラン」もたしかに民謡調だし、曲名にも「アリラン」が入っているので、記者の皆さんが早呑み込みしてしまったとしてもうなずけないこともありません。「独りアリラン」なら、集団で歌うのではなく、独り寂しく自分の想いをしっとりと歌い上げるような歌なのかなとなんとなく思ったりして・・・。
 しかし、その歌の内容を実際に読んでみると「アレレ!」なのですよ。
 これについては、<たーちゃんの韓国歌日記2>(→コチラ)に実に詳しく記されています。
 そもそも、何が「独り」なのかというと、なんと独島のことなんですね。
 このブログ記事には歌詞と、その日本語訳もついています。コピペの許可をお願いはしたのですが、昨年5月以降休止中のブログで即刻ご返事はいただけないようなので、「大いに参考させていただいた」ということで、若干変えて載せることにしました。

  저 멀리 동해바다 외로운 섬 오늘도 거센 바람 불어오겠지 
  조그만 얼굴로 바람맞으니 독도야 간밤에 잘 잤느냐
  금강산 맑은 물은 동해로 흐르고 설악산 맑은 물도 동해가는데 
  우리네 마음들은 어디로 가는가 언제쯤 우리는 하나가 될까
  백두산 두만강에서 배타고 떠나라 한라산 제주에서 배타고 간다
  가다가 홀로 섬에 닻을 내리고 떠오르는 아침해를 맞이해보자
  아리랑 아리랑 홀로 아리랑 아리랑 고개를 넘어 가보자
  가다가 힘들면 쉬어 가더라도 손잡고 가보자 같이 가보자
  가다가 힘들면 쉬어 가더라도 손잡고 가보자 같이 가보자


  あの遠い東海に独りぼっちの島 今日も激しい風が吹いてくるだろう
  小さな顔で風を受けて 独島よ昨夜はよく眠ったか
  金剛山のきれいな水は東海に流れ 雪岳山のきれいな水も東海に行くのに
  俺たちの心はどこに行くのか いつ頃俺たちはひとつになるだろうか
  白頭山豆満江から船に乗って発てよ 漢拏山済州島から船に乗って行く
  行って独りで島に錨を下ろし 昇る朝日を迎えてみよう
  アリランアリラン独りアリラン アリラン峠を越えていこう
  途中で疲れたら休んでも行き 手をつないで 行こう 一緒に行こう
  途中で疲れたら休んでも行き 手をつないで 行こう 一緒に行こう


 この歌詞を見て、「わずか1ヵ所の「独島」という言葉だけの問題ではない。選曲からして問題だ」と思う日本人の皆さんは多いのではないでしょうか? 
 韓国ウィキペディアの「ハンドル」の項目(→コチラ)にはこの歌についての次のような記述もあります。

 이 노래는 남과 북의 배가 서로 만날 수 있는 지점이 되는 곳이 독도라는 생각에 통일을 그렸던 서사시였다.(この歌は、南と北朝鮮の船がたがいに出会える地点となる所が独島だという思いで統一を描いた叙事詩だった。)

 なるほど、白頭山・豆満江に象徴される北朝鮮の人たちと、漢拏山・済州島に象徴される韓国の人たちが独島で出会うという歌詞になっています。
 まさに文在寅大統領の考えそのまま、といった感じです。
 <たーちゃんの韓国歌日記2>には、「北朝鮮でも知られ、愛唱歌となっているという。2005年に趙容弼がピョンヤン公演を行った時、要請を受けて、急遽歌うことになった。」とも書かれています。

 はたして、韓国の関係者は国際スケート連盟等にどこまで正確に説明したのでしょうか? また日本のメディア関係者は取材不足ではなかったでしょうか? 政府やオリンピック関係者の皆さんはどこまで理解していたのでしょうか?
 いやあ、私ヌルボ自身もここまで韓国人の<独島愛>が明確に込められた(というか、「政治的主張が込められた」というか)歌だったとは知りませんでした。ソヒョンの抜群の歌唱力はちょっと前から知っていたので、単に「さすがに上手いなあ」と思っただけで・・・。(彼女の歌についてはまた別記事で、というカラ手形っぽい予告はもう3ケタになりそう?)

[補足]実際のアイスダンスの演技の中で、この楽曲がどのような形で流されたか動画がないか検索してみたところ、→コチラのSBSのニュースの中でチラッと出てくる程度のものを見つけただけでした。しかしメロディーだけでなく歌も入ったものであることはわかりました。
[蛇足]この記事の主旨は、「独りアリラン」という歌が五輪の中で用いられたことと、それについての報道について問題提起です。歌そのものにについての批判や、文在寅政権に対する全面的批判、ましてや韓国あるいは韓国人一般に対する非難ではないので、誤解なきようお願いします。
[2月27日の追記]コメント欄に記した通り、ソウル一市民さんのおかげでこのペアの本番の演技のfull videoという動画を見つけることができたので貼っておきます。
[3月28日の追記]上の追記の時貼った動画がその後削除されていたので別のものを貼りました。

 やっぱり「東海」と「独島」という問題の部分だけは消されていますね。
 →と、2月27日には思いましたが、このNBC Olympic Channelの動画だと「東海」は消えているようですが「独島」の語は聞こえていますよ。
コメント (5)
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