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エスペランチスト黒板勝美

2014-10-28 | 南原繁『国家と宗教』
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2014年10月28日(火)21時22分48秒

黒板勝美(1874-1946)はザメンホフがエスペラントを発表してから19年後、1906年に日本エスペラント協会を設立したそうですが、よっぽど語学好きであり、また理想主義者だったんでしょうね。
日本エスペラント学会サイトには<1906年は「組織的エスペラント運動」の元年>とありますね。

http://www.jei.or.jp/jjj/jjj1.htm
黒板勝美
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%92%E6%9D%BF%E5%8B%9D%E7%BE%8E

私は群馬県の高崎高校出身ですが、高崎市は黒板勝美と多少の縁があります。
といっても、病気で倒れたのが高崎というだけのことですが。
坂本太郎氏の「古代史の道」から少し引用してみます。(『坂本太郎著作集第12巻』、p86)

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 昭和十一年は、黒板先生が病に倒れて再起不能になった年である。このことは前の国史大系の所でも触れたが、今少し詳しく述べねばならぬ。この年群馬県下史跡調査並びに臨時陵墓調査委員会の用務によって出張せられた先生は、十一月十一日、高崎市の旅館において脳溢血のために倒れた。すぐに動かすことは危険なのでそのまま静養の上、十二月二十日帰京し、一時駿河台の杏雲堂病院に入院加療せられ、やがて自宅療養の生活に入った。その後加療の効があって、手足の運動機能は恢復したが、言語障害はなおらず、こちらから言うことはわかっても、ご自身の意志の表明はできなくなった。常に熱弁をふるって自己の主張を通し、口をついて出る諧謔で相手を烟にまいた先生が、もの言わぬ人となったことは悲しみのきわみであった。いつも頑健を誇りにしていた先生に、六十歳を越えたばかりにこうしたことが起ころうとは誰も予期しないことであった。先生はすでにしかけている仕事、これから取りかかろうという事業を山ほども持っていた。国史大系の刊行、古文化研究所の運営は前者の例であり、国史館の建設は後者の例であった。
 このうち、国史大系は丸山、井野辺の両氏に私も、先生の意を汲んであとを継ぐ自信があったし、古文化研究所も、丸山氏、和田軍一氏らが熱心に事業の継続に当った。ただ国史館は紀元二千六百年奉祝記念事業のうちに取上げられたが、主唱者の先生が出席できないために、日の目を見ずに終わった。
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病気で倒れた年齢といい、その後の経過といい、石母田正氏と若干似てますね。
文中、「群馬県下史跡調査並びに臨時陵墓調査委員会の用務」とありますが、群馬県には陵墓はないはずなので、どのような案件だったのか、少し気になります。

「古代史の道」を読み直してみたら、この記述の少し前の部分、ちょっと面白いですね。

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 昭和十年度の学年末、初めて卒業論文の審査に加わった。国史学科では四人の教授、助教授が全学生の論文を読み、最後に一同に会してその成績を決定する手順になっていた。その会議の日が、何と十一年二月二十六日(二・二六事件)であった。場所は史料編纂所の所長室、私は何も知らずに出席したが、中村助教授が少しおくれて血相かえてとび込んで来て、「宮内省から来ましたが、門は閉鎖されていて、中々通さない。やっとのことで来ました」という。中村助教授は明治天皇御記編修会に関係されていたので、そのことで宮内省に朝行かれたのだそうである。後から考えれば、平泉教授は事情をご承知であったろうが、そのことについては何の立入った話もなかった。
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まあ、このとき平泉澄が置かれていた状況を考えれば、さすがに「立入った話」は無理だったでしょうね。
この時点では黒板勝美は退官していて、「四人の教授、助教授」の内訳は主任教授・辻善之助(1877-1955)、平泉澄教授(1895-1984)、中村孝也助教授(1885-1970)、そして新米の坂本太郎助教授(1901-87)ですね。
中村孝也は平泉澄より10歳上なのですが、平泉澄の方が先に教授になったので、もともと仲が良くなかった二人の関係はいっそう険悪になったそうです。
ちなみに中村孝也は高崎出身です。

中村孝也
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E6%9D%91%E5%AD%9D%E4%B9%9F
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