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旧制高校とラテン語(その2)

2014-10-29 | 南原繁『国家と宗教』
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2014年10月29日(水)10時38分32秒

>筆綾丸さん
秦郁彦氏の『旧制高校物語』(文春新書、2003年)に「旧制高等学校一覧」という表が出ていますが(p38以下)、それを見ると、明治時代に創立された「ナンバースクール」の昭和15年時点での一学年定員は、

一高(東京) 文理合計400人
三高(京都)・五高(熊本) 320人
二高(仙台)・四高(金沢)・六高(岡山)・八高(名古屋) 280人
七高(鹿児島) 240人

となっていて、五高の位置づけが少し高い感じですね。
意外、と言っては熊本に失礼かもしれませんが。
ちなみに大正期に増設された新潟・松本以下、数多くの「地名スクール」は文理合計200人で、一高の半分です。(但し、七年制の東京高校は160人)

語学については、同書に次の記述があります。(p60)

-------
 入試ばかりでなく、その後の進級・卒業判定の厳格さは、語学重視とならんで旧制高校の伝統となっていく。その語学だが、試みに外国語学の授業時間を見ると、予備門時代に英語が一週あたり一年次が八時間、二年次が六時間、三年次が四時間だったのに対し、高等中学校では文部省令により、各年次とも第一外国語が四時間、第二外国語(ドイツ語かフランス語)が四時間、それに何とラテン語の二時間が加わっている。
 さすがにラテン語は開講しないところが多かったせいか、明治二十七年の高等学校令では削除された。そのかわり第一外国語が九~八時間、第二外国語が六~四時間とふえている。全体の時間数の三割から四割に当る。教科書も原書がほとんどで、学校が一括購入して生徒に貸与した。国語、漢文は一貫して半分以下の時間数だから、「和魂洋才」どころか、「洋魂和才」をめざしたと言われかねない。
-------

旧制高校の前身の高等中学校時代にラテン語を週二時間としたものの、高等学校令では削除とのことなので、ラフカディオ・ハーンによるラテン語講義は五高独自の特別メニューみたいですね。
まあ、ラテン語を教えられる人は欧米だって限られますから、明治の日本で2時間必修はさすがに無理がありますね。
それにしても「全体の時間数の三割から四割」というのはやはり驚きです。

『旧制高校物語』には語学教育に関しての時期的な変化は特に記述されていませんが、フランス語の比重はだんだん軽くなったのですかね。
1925年生まれの辻邦生は一年浪人して旧制松本高校に入り、普通は三年で卒業のところ、二年落第して合計五年在籍した人ですが、『のちの思いに』において「全国でフランス語を専攻できる文丙のある学校はほんの四校か五校であった。したがって私たちは自学自習しなければならなかった」と書いています。
これはちょっと少なすぎるような感じがしないでもないですが、明治期からそうだったのか、あるいはドイツ語一辺倒の風潮で、フランス語が軽視されるようになってしまったのか。

※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。

柿くへば鐘が鳴るなり・・・ 2014/10/28(火) 21:53:45
小太郎さん
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC%E4%BA%94%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1_(%E6%97%A7%E5%88%B6)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%98%89%E7%B4%8D%E6%B2%BB%E4%BA%94%E9%83%8E
五高教授の在任期間は、ハーンが1891~1894年、漱石が1896~1900年なので、黒板勝美が漱石の講義を受けることは、幸か不幸、なかったことになりますね。
嘉納治五郎の校長在任期間は1891~93年ですが、黒板勝美が校長から直々にぶん投げられたことはなかったのでしょうね。

http://www.nikkei.com/article/DGKKZO78956360X21C14A0EL1P00/
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A6%85%E5%AF%BA%E4%B8%B8
今日の夕刊に、「日本の柿は本来、渋柿で、日本最古の甘柿「禅寺丸柿」は、1214年(建保2年)、王禅寺で偶然に発見された」というような記事がありました。王禅寺の寺伝にすぎないのでしょうが、本当だとすれば、実朝もこの甘柿を食べたかもしれないですね。金槐和歌集に甘柿の歌があったかどうか・・・。
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