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『徒然草』第五十二段「仁和寺にある法師、年寄るまでゆーちゅうぶをなさざりければ」

2023-12-19 | 鈴木小太郎チャンネル「学問空間」
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 仁和寺にある法師、年寄るまで石清水を拝まざりければ心うく覚えて、ある時思ひ立ちて、ただひとり徒歩よりまうでけり。極楽寺・高良などを拝みて、かばかりと心得て帰りにけり。
 さて、かたへの人にあひて「年ごろ思ひつること果し侍りぬ。聞きしにも過ぎて尊くこそおはしけれ。そも、参りたる人ごとに山へ登りしは何事かありけん、ゆかしかりしかど、神へ参るこそ本意なれと思ひて山までは見ず」とぞ言ひける。
 すこしのことにも先達はあらまほしき事なり。
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兼好法師も「すこしのことにも先達はあらまほしき事なり」と言われているので、昨日も「春木で呉座います。」を眺めていたところ、呉座氏が史料読解中心にしたのは「ミスター武士道」氏という有名な歴史系ユーチューバーとの差別化を図る意図もあったそうですね。(2:04あたり)

【呉座Solo】大河ドラマ『どうする家康』を歴史学者・呉座勇一が解説・最終回(全篇無料)ーー家康は秀頼を救うつもりだった? 大坂夏の陣の真実
https://www.youtube.com/watch?v=lzJLR4n492I&t=7236s

「戦国BANASHI 日本史・大河ドラマ解説チャンネル」
https://www.youtube.com/@sengokubanashi

「ミスター武士道」氏は紫式部を主人公とする来年の大河ドラマ「光る君へ」に対応するために鋭意勉強中だそうですが、公家社会はなかなか難しいですから、それなりのレベルの解説をするのはけっこう大変でしょうね。
ただまあ、平安時代の場合、戦国時代や明治維新と異なり、史実との異同にこだわる歴史マニアも少ないでしょうから、少しくらい間違っても誤魔化せるかもしれないですね。
かくいう私も平安時代は全然駄目で、正直に告白すると、私は『源氏物語』も全編通して読んだことすらありません。
一応、『とはずがたり』や『増鏡』で引用されていたり、文章が似ていたりする部分を中心に多少は読んでいますが、鎌倉時代に関してエラソーなことを言っているだけに、国文学者から糾弾されるのが怖くて、とても「光る君へ」の解説はできそうもないですね。

「炎上商法であろうと本さえ売れれば万々歳と思っているのだ」(by 呉座勇一氏)
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/aa5f72007b62f67762f43a3e82fbfb0e

ま、それでも『源氏物語』の受容史に関してなら多少は何か言えるかもしれません。
受容史に関しては、三田村雅子氏(フェリス女学院大学名誉教授)や今西祐一郎氏(国文学研究資料館名誉教授・元館長、九州大学名誉教授)を始めとして、無茶苦茶なことを言っている研究者は多いですね。
十五年も前になりますが、私は高岸輝氏(東京大学教授、美術史)が『室町絵巻の魔力―再生と創造の中世―』(吉川弘文館、2008)において、

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北山は『源氏物語』若紫帖において光源氏が紫の上を見出した地であり、ここに邸宅を構えた西園寺家は閑院流祖藤原公季以来、文雅の家を演出するために『源氏物語』の聖地であることを喧伝し続けたという。(p10)

https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/d76564e1c0a350c8447e5f1c0936b6f4

などと奇妙なことを言われているのを見て、「源氏の中将わらはやみまじなひ給ひし北山のほとりに」に関する今西氏の「若紫巻の背景-『源氏の中将わらはやみまじなひ給ひし北山』-」(『国語国文』53巻5号、1984)という論文を読んだことがあります。

今西論文その1、『源氏物語』注釈史
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/932e4aff20b0309968010e86fc8f1134
今西論文その2、「北山」の「なにがし寺」
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/b5ed50e3c6468b7a75650f1f028ab0cb
今西論文その3、仮説の九十九折
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/5adb2d33694b17efc9d476cfe69b81f2

また、上記論文から派生して、足利義満と『源氏物語』に関する松岡心平・三田村雅子・小川剛生・桜井英治氏の論文・座談等を読んだことがありますが、今をときめく小川剛生氏や桜井英治氏も、まるで熱病に罹ったようにタワゴトを言われていましたね。

「学問空間」カテゴリー: 高岸輝『室町絵巻の魔力』
http://blog.goo.ne.jp/daikanjin/c/4ca6cde3ed4da52e78a85fd5bdf482ab

ただ、さすがに小川剛生氏だけは後になって少し反省されたようですが。

「自戒を込めて」(by 小川剛生氏)
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/9326f9b5affc014f12d12dfc8bf9204c
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