投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2012年 6月27日(水)23時01分46秒
群馬県桐生市の女性市議が除名された問題で、某所に投稿したものをこちらに保存しておきます。
私はネットで法律に関係する議論をするときには普通の人にも分かりやすい表現を使うように工夫しているつもりなのですが、専門用語を使って簡潔に論じた方がよいときもありますね。
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法律の細かい話なので続けるべきか迷ったのですが、一応書いておくことにします。
興味のない人はスルーしてください。
■■さんは庭山市議の問題について、次のように書かれました。
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除名決議が可決しても、職を奪うのは、司法の判断が必要です。市議がとどまると言えば、それまでです。市議の誰かが司法に決議の妥当性確認をする必要があります。
また。除名を受けた市議が、決議無効の司法判断をすればですが。任期終了後でも出来ます。
とういうわけで、除名決議をしました。よ。というだけです。任期終了まで、市議でおれます。次の選挙で当選すれば、良いことですし。
除名決議なんて、なんの効力もない。法的根拠はここのでも過去のコメント蘭に書いています。
公職選挙法で、選ばれた人間の職を奪えるのは、司法とリコールのみ。
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しかし、これらは全て誤りです。
地方議会における議員の除名決議は、特にこれに基づく執行機関の処分をまたず直ちにその議員をして議員たる地位を失わしめる法律効果を生ぜしめる行為です。
この点は明確な判例があり、学説にも異論がありません。
また、除名決議は講学上の「行政行為」に該当し、行政事件訴訟法3条2項にいう「処分の取消しの訴え」の対象となる「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」、即ち「処分」に該当します。
従って、「処分」である除名決議には「公定力」があり、仮に違法であっても、取消権限のある国家機関によって取り消されるまでは完全に効力を有し、何人(私人・裁判所・行政庁)もその効力を否定できません。
この点は行政行為と私人の法律行為との大きな違いです。
そして「処分」である除名決議の違法性を争う方法は原則として行政事件訴訟法の「取消訴訟」に限定され(「取消訴訟の排他的管轄」)、出訴期間の制限(6か月)もあります。
また、「処分」の「取消訴訟」は形成訴訟であって、原告勝訴の取消判決が確定して初めて「処分」の効力が処分当時に遡って形成的に消滅します。
■■さんは「除名処分執行停止申立をまずする必要があります」と書かれていますが、「執行停止」はそもそも除名処分に「公定力」があり、有効であるからこそ、仮の救済として認められている制度です。
民事事件と行政事件の違いを理解していないと執行停止制度の理解も困難なのですが、まず、行政事件では民事事件と異なり民事保全法に定める「仮処分」は認められていません(行政事件訴訟法44条)。
また、「執行停止」の申立ては、本案訴訟が適法に提起されていなければできず(行政事件訴訟法25条2項本文)、この点も一般の民事訴訟において、保全訴訟が本案訴訟から独立して可能であることと異なります。
そして行政事件訴訟法25条1項は「処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない」ことを明確に定めており(「執行不停止原則」)、この「執行不停止原則」があるからこそ、原則の例外として、仮の救済の必要性が高い場合に限って「執行停止」を認める、という制度になっています。
行政事件訴訟法25条1項を読めば、「除名決議なんて、なんの効力もない」という■■さんの見解は全く成り立ちえないことは明らかです。
なお、以上は庭山市議の問題の特殊性を一切考慮していない一般論です。
一般論として■■さんの見解には正しいところが一つもありません。
群馬県桐生市の女性市議が除名された問題で、某所に投稿したものをこちらに保存しておきます。
私はネットで法律に関係する議論をするときには普通の人にも分かりやすい表現を使うように工夫しているつもりなのですが、専門用語を使って簡潔に論じた方がよいときもありますね。
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法律の細かい話なので続けるべきか迷ったのですが、一応書いておくことにします。
興味のない人はスルーしてください。
■■さんは庭山市議の問題について、次のように書かれました。
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除名決議が可決しても、職を奪うのは、司法の判断が必要です。市議がとどまると言えば、それまでです。市議の誰かが司法に決議の妥当性確認をする必要があります。
また。除名を受けた市議が、決議無効の司法判断をすればですが。任期終了後でも出来ます。
とういうわけで、除名決議をしました。よ。というだけです。任期終了まで、市議でおれます。次の選挙で当選すれば、良いことですし。
除名決議なんて、なんの効力もない。法的根拠はここのでも過去のコメント蘭に書いています。
公職選挙法で、選ばれた人間の職を奪えるのは、司法とリコールのみ。
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しかし、これらは全て誤りです。
地方議会における議員の除名決議は、特にこれに基づく執行機関の処分をまたず直ちにその議員をして議員たる地位を失わしめる法律効果を生ぜしめる行為です。
この点は明確な判例があり、学説にも異論がありません。
また、除名決議は講学上の「行政行為」に該当し、行政事件訴訟法3条2項にいう「処分の取消しの訴え」の対象となる「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」、即ち「処分」に該当します。
従って、「処分」である除名決議には「公定力」があり、仮に違法であっても、取消権限のある国家機関によって取り消されるまでは完全に効力を有し、何人(私人・裁判所・行政庁)もその効力を否定できません。
この点は行政行為と私人の法律行為との大きな違いです。
そして「処分」である除名決議の違法性を争う方法は原則として行政事件訴訟法の「取消訴訟」に限定され(「取消訴訟の排他的管轄」)、出訴期間の制限(6か月)もあります。
また、「処分」の「取消訴訟」は形成訴訟であって、原告勝訴の取消判決が確定して初めて「処分」の効力が処分当時に遡って形成的に消滅します。
■■さんは「除名処分執行停止申立をまずする必要があります」と書かれていますが、「執行停止」はそもそも除名処分に「公定力」があり、有効であるからこそ、仮の救済として認められている制度です。
民事事件と行政事件の違いを理解していないと執行停止制度の理解も困難なのですが、まず、行政事件では民事事件と異なり民事保全法に定める「仮処分」は認められていません(行政事件訴訟法44条)。
また、「執行停止」の申立ては、本案訴訟が適法に提起されていなければできず(行政事件訴訟法25条2項本文)、この点も一般の民事訴訟において、保全訴訟が本案訴訟から独立して可能であることと異なります。
そして行政事件訴訟法25条1項は「処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない」ことを明確に定めており(「執行不停止原則」)、この「執行不停止原則」があるからこそ、原則の例外として、仮の救済の必要性が高い場合に限って「執行停止」を認める、という制度になっています。
行政事件訴訟法25条1項を読めば、「除名決議なんて、なんの効力もない」という■■さんの見解は全く成り立ちえないことは明らかです。
なお、以上は庭山市議の問題の特殊性を一切考慮していない一般論です。
一般論として■■さんの見解には正しいところが一つもありません。
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