Mr.コンティのRising JAPAN

マスコミの書かない&書きそうもない!スポーツ界の雑学・裏話を、サッカーを中心にコメントを掲載していきます。

世界一の投手と世界一の失望……

2008-08-25 | 夏季五輪

1960年代末頃、東京五輪での“東洋の魔女”が世界を圧巻していた当時、ある遠征先の欧州の新聞に当地を遠征していた男女バレーボールチームが写真付きで紹介され、キャプションがついていた。その内容は ;

       “東洋の魔女とクズ” 

これは男女のバレーボール代表チームの当時のおかれた立場だった。
この記事を目にした当時の松平男子バレー監督はもう銅メダル(東京五輪で勝ち取った)は要らない、メキシコでは銀をそしてその次は金を狙うと誓ったそうだ。そしてミュンヘンで金メダルを勝ち取ったことを知る人は多いだろう。
今私は約40年前に欧州の記事に紹介されたキャプションをそのまま日本の新聞に使って頂きたい。ソフトボールチームの写真と今回の野球チームの写真、それから“魔女とクズ”のコント場を引用して。

8月22日、日本は準決勝で韓国に敗れ決勝進出を阻まれ、翌日の3位決定戦ではアメリカに力負け。金メダルどころかメダルそのものにまったく手が届かなかった。五輪での戦績は4勝5敗の負け越し。韓国、キューバそしてアメリカの上位3カ国には5戦5敗。日本のプロ野球のレベルの低さだけが確認された五輪であった。

韓国に連敗…… 1982年、韓国にプロ野球が創設された年、ある週刊誌に前年日本プロ野球を制したジャイアンツが韓国のチームと日韓決戦を行い韓国チームに敗れると言った内容のフィクションが短期であったが連載された。9年後の 1991年シーズンオフ、韓国プロ野球の選抜チームが日本に遠征し日本プロ野球選抜チームと7試合を行った。その韓国選抜チームには宣銅烈らがいた。その時に韓国からのゲスト解説だった方が何度も日本語で言った。

     “韓国に日本の野球を教えて下さい……”

プロがオープン参加する様になった2000年のシドニー五輪、日韓両国ともにプロ選手を擁してメダル、優勝を目指した大会。日本は松坂、黒木、中村紀洋らがメンバーにいた。しかし日本は1次リーグ、3位決定戦で韓国に敗れメダルを逸した。松坂が韓国打線を抑えられなかった。思えばその頃から韓国プロ野球は日本プロ野球を凌駕し始めていたのだった。2006年の WBC でも日本は優勝したとは言え韓国には2連敗を喫していた。

先制するも守り切れず…… 8月16日 1次リーグ 第4戦 日本 3-5 韓国
日本の先発は和田(ダイエー)、韓国は金広鉉 ( SK ) 昨年のコナミ杯では中日打線相手に6回 2/3 3安打1失点に抑えて勝ち投手となっている。今大会ではアメリカ戦で3番手(1イニング1被安打無失点)として登板していた。

  

両投手好投を見せた投手戦の均衡を破ったのは日本の4番打者新井。前日まで11打数2安打4三振。その2安打も“格下”オランダ戦で放った安打。見事に4番としての期待に応えた一発だった。だが新井の一発は先発金広鉉からでは無く二番手の尹錫。新井の打席から金広鉉がマウンドを降りたのだが、私は好投の金が替ってしめたと思った。そして尹から新井が本塁打を打った。こう言う一発は韓国ベンチに堪えたはずだった。
しかしその直後韓国は追い付く。7番DHの李大浩に同点2ランを浴びる。さすがに2006年の韓国プロ野球3冠王だと思ったがバッテリーももう少し工夫出来なかったか?相手はホームランバッターとはいえこの試合の前の打席まで7打数1安打2三振の不振をかこっていた打者だった。その前の金東進をストレートで歩かせたところでの交代が遅れたと試合後星野監督も後悔していたが李大浩の推定年棒は2億1千万ウォン。 ( 約2,158万円 ) 億単位の年棒をもらっているバッテリーなら抑えて欲しかった。

   

尚も迎えたピンチは2番手川上憲伸が切り抜けたが最終回に登板した岩瀬が掴まり3点を失ったが失点の内容が頂けない。勝ち越しのタイムリー2アウトを取った後でその後も田村、阿部の連続エラーから追加点を失った。それでも最終回はこの回から登板した権奕の不安定な投球内容に乗じて1点を返してなおも無死2,3塁のチャンス。しかし阿部が低めのボール球を打ち上げ、続く G.G.佐藤、代打森野らが3番手の鄭大に討取られて同点機を逸した。悔やまれたのは阿部の一打。権奕はストライクが全く入らない状態。 1ストライク3ボールのバッティングチャンスとはいえ低めのボール球に手を出してしまった。あそこを見送っていれば無死満塁となっていたので悔やまれる打席だった。しかし、マスクをかぶる阿部にそこまで緻密さを求めるのは酷かもしれない。初戦のキューバ戦は里崎がマスクをかぶり以降阿倍がマスクをかぶったが、3試合連続捕手としてスタメンで使うよりもこの試合は里崎が捕手、阿部は打力を生かすべくDHとした方が良くは無かったか?
日本はこの韓国戦が4連戦目。韓国は2日目の中国戦が雨で途中で中止となりやや疲労度が違ったか?韓国の勝負強さを見せつけられた試合だったが日本の自滅とも言えなくもない。エラーで追加点、拙攻で追いつけず…..
だがこの時点では殆どの日本人が野球でメダルを逃す事を想像しなかっただろう。

もはや韓国に教えを乞う時代だ  8月22日 準決勝 日本 2-6 韓国
9回表、この回から登板した尹錫は GG佐藤を右翼飛、代打森野を三振、そして代打阿部も良い当たりではあったが右翼ライナーに討取り日本の金メダル獲得の夢を打ち砕いた。最後、阿部のライナーを掴んだ右翼手の李容圭はまさに拝み取り。この試合に勝った韓国チームいや韓国国民の心情を表していたと思う。

  

前日のアメリカ戦は“負けても良い。勝ってキューバと準決勝で当たるよりは……” 私自身もそう思った。そしてここからが本番。日本のプロ野球選手達は本領を発揮してくれるだろう、と言う期待を抱いていた。韓国の先発は1次リーグと同じ金広鉉、日本は杉内。オランダ戦以来の登板。中6日の間隔がどう影響するだろう??と少し心配であったが…….
試合は日本が2点を先に取れば、韓国も4回に1点を返す。この日の星野監督は先発の杉内が1点を失うとすぐに川上を投入する早目のスイッチ。6回に成瀬を挟んで7回から1点リードで藤川を投入したが、ここで何故藤川なのだろう? 8回からではダメだったのか??藤川の持ち味は時速 150km を越える剛速球。しかしデーゲームではその速球も威力が落ちる。それが藤川を“中継”にした理由か……. 藤川は先頭の金東進を討取り、この打席まで .429 とあたっていた李大浩に対しては自慢のストレートで押した。惜しまれるのは 1-1 からの3球目のアウトコース低めのきわどいところをボールと判定されたことだ。150km を越えるストレートを投じてもストライクはファールされ高めのボールは見送られ歩かせてしまった。ジャイアンツ戦で見せるようなフォークボールをまじえてもよかったのではないか?ランナーもいなかったので… 李大浩には1次リーグでは痛恨の同点本塁打を打たれたがこの試合は3打席3四球。警戒するのはわかるが日本の投手陣はもう少し攻め方は無かったか…….. 韓国の金卿文監督は李大浩に替えて鄭根宇を代走に送ったがこれが試合の流れを引き寄せた。続く高永にも詰まりながらストレートを左翼前に運ばれた姜鍋を討取った後、代打の李晋映を迎える。2006年のWBCでは西岡のライト線への飛球をダイビングキャッチした選手だ。この選手に対して藤川はフォークボールを投じるが 1-1 からの3球目を見送られたのが痛かった。2-2 からファールを打った後の6球目の変化球を右翼に引っ張られた。そして代走の鄭根宇がホームに駆け抜けた。ライト稲葉の返球がよかったので李大浩がそのままランナーに残っておればホームにはかえっていなかっただろう。藤川もこれだけ投げれば、そしてデーゲームでは最後はストレートも変化球も切れが鈍って来ただろう。 李晋映はその後遊撃手の位置についた。内野も出来るのか……

8回裏には何故か岩瀬がマウンドに。延長戦を見越して上原はまだ温存というのはわかるがベンチにはそんなに投手がいなかったのか……相手は怖い李大浩をベンチに下げていたと言うのに。案の定と言っては中日ファンに失礼か?岩瀬は李承に一発を浴びた。この前の打席まで全く不振だったというよりも今年全くバットが振れていなかった李承がここで撃つのは流石の一言。日本には今こう言う打者がいない。今シーズン李承は岩瀬に対して7打数無安打。しかしシーズン中の李承は故障から来るこれまでに例のない大スランプ、今の李承とは比べ物にならない悪い状態だったに違いない。李承はシドニー五輪、WBCそしてこの北京五輪と日本戦ではいつも試合を決める一打を放つ....... 後はジャイアンツの為に打ってくれ...

  

更に日本はGG佐藤の信じられないエラー等で2点を失い、この時点で金メダルの可能性は潰えていた。エラーは誰でもするが、ここ一番で打つ李承や李晋映と比較すると……… そして李大浩に替えて代走に鄭根宇を送った金卿文監督の采配も。岩瀬を投入した星野監督と比較すると…… 西岡が1番DHスタメンで出場したが西岡をDHで使うと阿部がベンチに下がる事に。本来は遊撃手で1番を任されるべき選手。彼の故障が日本の攻撃力を減少させた。日本の悩みは1次リーグを終えてチーム打率が2割4分2厘(参加国中4位)と貧打に苦しんでいることだった。しかし、1、2番で主に出場する西岡剛(ロッテ、4割3分8厘)、荒木(中日、3割0分8厘)は3割以上を打っており、中軸の新井貴浩(阪神、2割9分6厘)、稲葉篤紀(日本ハム、2割5分0厘)は長打力に優れていた。それだけに西岡の先発は優先させられたと思う。韓国は1次リーグを終えてチーム打率が2割8分6厘(参加国中2位)で、日本を上回っていた。李大浩(ロッテ)は .429で3本塁打を記録。金賢洙(斗山) .421、李容圭(起亜).450李鍾旭 (斗山)は.370 を打っており、また大舞台に強い李承がここぞと言うところで勝負強い一発を放つことができた。韓国が勝つべくして勝った試合、まさに実力の差を見せつけた試合だった。

完全に力負け、どこが最強のチームだったのだろう 8月23日 日本 4-8 アメリカ
打球の音が違う、前に飛んでも後ろに飛んでも、フェアーでもファールでも。荒木、青木の本塁打で 4-1 とリードを奪い主導権を握るもブラウンの2号3ランで追いつかれ5回に川上憲伸がティーガーデンに勝ち越しの2塁打、続くドナルドにレフトポール直撃の一発を浴びて 4-8 とされるともう日本はゲームセットの宣告を待つだけだった。3回のブラウンの3ランホームランはその前に G.G. 佐藤がまたもイージーなレフトフライを落球したエラーから。同じエラーも2度目なら何と言い訳するのだろう…..
このチームには他に左翼手がいなかったのか? 

   

5回に川上が打ち込まれたが先発投手でありながら中継ぎばかりこの試合が5試合目の登板。 ボールが思うように走らなかったのだろう。それにしてもセ・リーグを代表する投手川上がいとも簡単に打ち返されるのを見ると少し哀しくなった。相手はアメリカとはいえメジャーの選手では無いのに……..
韓国の打者もそうだけどアメリカの打者も思い切って振ってくる。この試合も10三振を喫しながら長打を本塁打3本を含む6本を放った。日本打線も4回以降は8回まで散発の3安打。そして併殺打が二つ。2塁を踏めなかった。最終回は先頭打者の青木が四球で出塁、新井、稲葉が討ちとられ中島がセンターにはじき返しようやく2塁にまでランナーを進めたが最後の阿倍が1塁ゴロに倒れて万事休す。 金メダルどころか表彰台にさえ立てなかった。日の丸を揚げることさえ出来なかった。 

   

その原因はなんだったのだろう………

選手の選考は……..
優勝した WBC とは明らかに戦力は落ちていた。イチロー、松坂、福留らが抜けた。それを埋めるだけの戦力は今の日本プロ野球界には存在しないのだろうか?? 今回10人の投手がエントリーされた。前回のアテネ大会は11人だったがシーズン中でも中継ぎ、抑えを担っていた投手が少なすぎなかったか?先発投手が多すぎなかったか?最後に川上憲伸が打ち込まれたのもそのツケが回って来たと思う。そして打者の方では絶対的な長距離砲が少なかった。期待の村田は打率が1割にも満たずに1次リーグの韓国戦の重要な場面で失策をするおまけ付き。新井は .257 だったが本塁打1本は寂しい。9試合を終えてチーム打率が .234 の貧打。これが中国、オランダと言った格下のチームを除いた数字ならどうなっていただろう。そして韓国、キューバ、アメリカ戦のみの数字を抜粋していたならば…… 3割を超えた打者は西岡 ( .455 ) だけであった。
またこの大事な五輪を前にどうして故障などしてしまうのだろう?故障をした選手を北京に連れて行く必要があったのだろうか?怪我をしない様にペナントレース中は手を抜けと言っているのではないが、マラソン選手の様に年に2回程度しかレース(試合)に出ないわけでなくほぼ毎日試合をしているのだから。もしこのメンバーが現在の日本プロ野球を代表するメンバーであれば日本のプロ野球は世界で4番目のランクと言う事だ。

モチベーションは???
金メダルの韓国はこれで兵役が免除される。キューバは五輪の野球が“国家行事”。日本はどうだったのだろう…. シーズン中に選手達を供出するのがどの球団もかなりの抵抗があったと思う。そんな中で選手を選考するのは大変なことだっただろう……. 韓国の様に国を挙げて、野球界を挙げて五輪に取組と言う姿勢は無かったはずだ。五輪で野球が再採用される確率はソフトボールのそれよりかなり低い。北京五輪のこの結果に、そしてこれからの五輪での野球の扱いに12球団のオーナー、そしてプロ野球コミッショナー達は安堵の息を漏らしていることだろう。シーズンオフになれば契約更改の席で五輪代表選手達は球団側からこう言われるだろう 

  “君達は君達の半分程度の選手達に負けたのだよ..”    

そして選手達は答えるだろう。“五輪は契約に入っていませんから……..”

監督は……
日本のマスコミは星野監督を高く評価していた。しかし高すぎやしなかったか? 
星野監督は現役時代からよくテレビでよく見ていた。しかし中日が優勝した 1974年以外はそんなに巨人打線が抑え込まれたという記憶が少ない。 1981年に優勝したジャイアンツ戦に5勝をしたけど、その2回くらいだ。確かに王、長嶋相手のシーズンが長かったが……. 唯一出場した1974年のロッテとの日本シリーズではけっして良いピッチング内容ではなかった。そして中日はロッテに敗れた。 
監督として3度リーグ優勝を果たしているが日本シリーズでは勝っていない。その辺に今回の結果が反映されているかも…….

  

来年3月に第2回目のWBCが開催される予定だが、五輪での汚点はどうやっても消えない。消す事は出来ない上に補填もなされないなす術もない。 選手達は現地の日系の一流ホテルに滞在していたらしい。食料も水も日本からの調達だったとか。勝つ為の投資は惜しまない。それは充分納得できる。しかしそれが結果に結び付かなかったときは全てが浪費と計上される。 そしてそれだけでなく.......

プロ野球ファンになって40年近くが過ぎるが準決勝終了後がもっともプロ野球に失望させられた日だった。 

   

   



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