なでしこのキックオフで始まった試合は、開始早々鮫島のスローインを受けた川澄が左サイドからドリブルでしかけるが Slatyer がマークに入りCKに。宮間が入れたCKに澤がネァーサイドに飛び込みGKBarbieriと競りながら頭に当てたボールは後方の Slatyer の肩にあたり Matildas ゴールに。これを Uzunlar が蹴り出し最後は Barbieri が抑えた。このシーンを見た時に以降はなでしこが主導権をもって試合を進めるだろうなぁ、と思った。
New Zealand Ferns に1勝1分
昨年9月中国で開催されたロンドン五輪女子サッカーアジア地区最終予選で3位となり2大会連続で五輪出場を逃したオーストラリアサッカー女子代表 Matildas は北京五輪前にも神戸でなでしこジャパンと壮行試合を行う為に来日した。この時も男女五輪代表の壮行試合のダブルヘッダーで男子もオーストラリア代表 Olyroos だった。 なんで関東で開催してくれなかったんだろう….と当時悲しく思った。
この試合はなでしこが Matildas を 澤、大儀見(当時は永里)そして丸山佳里奈のゴールで3-0 で降した。当時のなでしこメンバーでロンドン五輪メンバーにも選ばれた選手はGK福元、安藤、近賀、岩清水、澤、宮間、阪口、矢野、大儀見、そして丸山佳里奈、海堀(途中から出場)。当時の試合に出場した Matildas のメンバーで今回は GK Melissa Baribieri, Kathryn Gill, Servet Uzunlar, Brooke Spence, Kyah Simon の5人が遠征メンバーに入っていた。
2011年のワールドカップでは2007年大会に続いてベスト8に進出したが連続して五輪出場を逃した Matildas は今若返りを図っている来しいが監督はワールドカップ、五輪予選と同じ Tom Sermanni 監督。
来日前に New Zealand Ferns 事ニュージーランド女子代表とキャンベラで2試合行い1勝 ( 2-0 ) 1分( 1-1 )であった。
6月24日に行われた初戦では50分にニュージーランドの Hayley Moorwood に先制ゴールを許し、このまま1994年以来そしてオーストラリアの地では1991年以来、ニュージーランド女子代表が Matilodas を破るのかと思われたロスタイムに Thea Slayter がヘッドで同点ゴールを決め何とか引分けに持ち込んだ。
この試合には GK Barbieri を始め Teigen Allen, Clare Polkinghome, Laura Alleway, Catitlin Foord, Elluse Perry らワールドカップ2011メンバーと Sara Warsh らが出場していた。
終了直前の Slayter のゴールで何とか引き分けたが Sermanni 監督は“ 引分けと云う結果は大変に素晴らしい。これは新たにメンバー入りした選手には多くの自信を齎しただろう。”と肯定的なコメント。
“多くの代表デビュー選手や代表歴の少ない選手がチームにいたので、その将来は明るいものと思われた。与えられた環境下であまり一緒にトレーニングをする機会が無い中多くのチャンスを創れた事は喜ばしい事だった。五輪前の準備期間にあるニュージーランドのコンディションはピークにあり、大変組織化されていた。これは良いドリル(練習)となった。” とも語った。
3日後の6月27日に行われた New Zealand Ferns との第二戦は Sarah Walsh の2ゴールで Matildas が勝利を収めた。
これで Walsh は代表でのゴール数を31とし Cheryl Salisbury のもつ代表での38得点まであと7と迫った。
Sarah Walsh はアテネ五輪、ワールドカップ2007中国大会そして 2006, 2010 AFC Women’s Asian Cup にも出場している。
昨年のワールドカップは残念ながら怪我で出場出来なかった。 Sarah が出ていれば準々決勝のスウェーデン戦に勝って日本と準決勝戦であたっていたかもしれない。そのほうが面白かったかもしれない。 FIFA World Cup 2006 で日本がオーストラリアに敗れた地、ドイツでなでしこが仇を討つ、と云う事を楽しみにしていたんだけど。
そしてゴールポストやクロスバーに助けられはしたが GK Barbieri の無失点試合数も34に伸ばした試合でもあった。
“あなた達は我々がたやすく勝利を得たとおもっているだろう。確かにいくつかの素晴らしい football を見せて試合が進むにつれてチャンスを多く作った。我々はここにまだ試した事のないコンビネーションで試合に臨みロンドン五輪の為に最終調整をおこなっているチーム相手に1勝1分を納めた。であるからこの結果には大変満足している。数日かけて翌月の日本遠征を選抜する” この様に Sermanni 監督は語った。
殊勲の Walsh は “元 Matildas選手達からはニュージーランド戦の不敗試合を続けることへのプレッシャーを受けた。18年も負けていないチーム相手に敗戦を喫するメンバーに入りたくないという事には一般の人には理解できないプレッシャーがある。五輪を前にしたニュージーランドの選手達は我々よりもよく準備が出来ていた。だからプレッシャーも大変だった。若い選手達はこの試合が良いステップアップになっただろう。 スコアーシートを見ると最初の Ellyse Perry のクロスが良かった。私は普段はヘディングはあまり得意ではないが上手く合わせられた。前半にはいくつかチャンスをミスしてしまった。だから後半は何とか決めねばと思った。 丁度足元の良い位置にボールが来て中にまさにシュートを撃ちたい位置に切れ込む事が出来た。特にこの様な試合で1試合に2ゴールできると言う事は大変な安堵となった。” 日本遠征を前にこう語った。
若手中心の日本戦遠征メンバー
来日メンバー18人中、ワールドカップ2011メンバーだったのは GK Melissa Barbieri , DF Laura Alleway, Teigen Allen, MF Tameka Butt, Servet Uzunlar FW Caitlin Foord, Kyah Simon の7選手。 Uzunlar, Butt, Simon はニュージーランド戦には召集されなかった様で反対に Kyah Simon, Clare Polinghome, Ellyse Perry といったニュージーランド戦に出場していたワールドカップ 2011メンバーは来日しなかった。
“日本の様なそして特に昨年素晴らしい偉業を達成したチームと対戦すると言う事はもし勝つ事が出来れば素晴らしい事だと思うがそれは非常に困難なこととも思う。しかし五輪前に招かれて日本と試合をするという事は大変な名誉である。“ Sermanni 監督はこう語った。 DF Daniel Brogan はニュージーランドとの違いを語る。” ニュージーランドの質の高いチームであるが世界王者の日本との対戦となると全く異なった試合となる。早い展開となるだろうし90分間まさにファイトせねばならない。そして日本をプレーさせてはいけない。我々は自分自身を振り返らねばならない。我々は世界のトップ10に位置しているので自分達の能力を低く見るべきではない。日本をリスペクトしたくなるが自らの墓穴を掘る程には敬意を払わない。“ と話した。
メンバーには Emily Gielnik, Katrina Gorry と云ったまだ代表出場歴の無い選手も帯同している。昨年開催されたAFC U-19 のメンバーが5人選ばれていた。ただ Teigen Allen, Caitlin Foord はワールドカップメンバーであったけども。 Emily Gielik は初戦のベトナム戦でハットトリックを演じ、勝利 ( 4-3 ) に貢献したが以降北朝鮮 ( 0-1 ) 日本 ( 0-1 ) 中国 ( 1-3 ) そして韓国 ( 2-4 ) と4連敗で6チーム中5位に終わり今年日本で開催される FIFA Women’s U-20 大会への出場権を逃してしまった。
Gielnik はその後国内リーグW-League の Brisbane Roar でも頭角を見せ来シーズンは FA Women’s Super League の Liverpool でプレーする事となった。
Walsh ベンチスタートの Matildas . なでしこは大儀見と安藤の2トップ。
両チームのスタメンは下記の通りだった。
GK 1 Barbieri
7 Foord 13 Slatyer 19 Catley 19 Cately
10 Uzunlar 23 Kenedy
16 Butt 17 Simon 3 Brown
12 Gill
7 安藤 17 大儀見
9川澄 8 宮間
6 阪口 10澤
5 鮫島 4熊谷 3 岩清水 2 近賀
GK 1 福元
競技場のオーストラリオ側に来るとオージーらしき人は誰もおらず、日本人の方が4名ほどおられた。その中でオーストラリア代表のレプリカや黄色の帽子を被った人も。 私も尊敬する Warren のユニフォームに着替えたけど….
しかし多分 Socceroos の試合だったら着なかったと思う。
話しかけると昨年の五輪予選の観戦に出掛けられたそうだ。う~ん、羨ましい。 我々だけというのはちょっと寂しいですねてな話しもした。
なでしこは開始早々のチャンスに続いて2分42秒には大儀見がシュートを放つなど強さを見せる。その後 Matildas が攻撃に転ずるもここは澤がうまくカバーをしてシュートに持ち込ませない。 5分には Brown が左サイドをドリブル突破するシーンが見られた。
8分には川澄が右サイドで Catley を振り切り入れたクロスに宮間が長身の Slatyer とFoord の間に割って入りヘッドを撃つがポストの左に外れて行く。10分には近賀のロングパスに抜け出した大儀見が Slatyer を振り切りシュートを放つが今一ヒットせず GK Barbieri の正面に。だけど Barbieri はちょっとファンブルを。 Barbieri もボールに手が付かない模様。
なでしこは立ち上がりロングボールを多用している様に見えた。そしてフィールドを広く使っていたが結構トラップミスもあった。合宿中で身体にはかなり負荷をあたえられていたのでコンディションはまだ100%には上がっていないのでそれも仕方ないとおもう。
しかし Matildas の方は更に動きに切れがみられない。 寒い南半球からやって来たので暑さ厳しい東京での試合は厳しいか?
13分46秒阪口のミスパスを拾った Simon が左サイドを突破し近賀がタックルに入る前に上げたクロスが熊谷と競り合いながらワントップの Gill に当たるがGK福元の正面に。 絶好のチャンスだったけど以降前半終了まで Matildas がなでしこゴールを襲うシーンは見られなかった。21分には Matildas PA 前でボールを回して澤からボールを受けた大儀見がダイレクトでシュートを放つが Foord の脚に当たってGK Barbieri に。
そして25分、川澄が Foord と競りながらCKを奪い、ショートコーナーを受けた川澄を後ろから Butt が引っかけてしまい川澄が倒れるとシンガポール人のアバイ・ナ・イドゥ主審はペナルティースポットを指した。 ちょっと厳しい判定だとおもったけど。
これを宮間が落ち着いて左側に決めてなでしこに先制点を齎した。
先制を許した Matildas は試合再開後 Brown が左サイドをドリブルで上がり近賀、岩清水の間から中央に突破してくるがここは阪口がクリアー。その直後にも Butt がドリブルで上がりCKを奪うなど気候に慣れたか徐々に動きが良くなって来たように見えた。
しかしシュートシーンはなでしこばかりが見せる。31分には宮間のアーリークロスから澤がフリーでヘッドを放つがクロスバーを越える。
32分30秒には川澄が左から中に切れ込んでドリブルシュートを見せるも GK Barbieri がCKに逃れる。そのCKから岩清水がフリーでヘッドを放つがゴールは捉えられない。
36分には右サイド宮間が Catley, Brogan をかわして低いクロスを中にいれると安藤を越えて大儀見がシュート体勢に入るが僅かに合わなかった。 Matildas DF陣はやはり暑さが堪えるのか30分を過ぎるとマークに付けなくなって来た。41分には正面遠い位置からゴール前に入れると GK Baribieri が脚にあててしまう中途半端なプレー。失点には結び付かなかったが危ないシーンだった。
しかしロスタイムに入った46分、またも右サイド宮間からオーバーラップした近賀に縦パスが入り、中に入れると中央に走り込ん大儀見が押し込んでなでしこが追加点を挙げた。 何度もチャンスを逃していた大儀見だったがここで4試合連続ゴールをきめたところは流石だと思った。大儀見は五輪でもまた得点を決め続けてくれる事を期待したい。
Matildas は後半からついに Warsh を投入する。後半からは気温も下がって来るので Matildas の身体も切れが出て来るだろうと思った。51分にはなでしこPA内で Simon が粘って Uzular に戻し、なでしこゴール前にハイボールを送ると中央で飛び込んだのは184cmの Kate Gille。しかし近賀が身体を預けて思う様なシュート体勢を取らせずゴール枠を捉えさせない。五輪ではカナダ、スウェーデンという長身選手がそろったチームを相手にせねばならない。 しかし後半の Matildas の挽回を期待するも58分になでしこは3点目を挙げる。CKのこぼれ球を中央から澤が強烈に、というよりも狙いすました様に Matildas ゴールの右下隅に蹴り込んだ。
澤自身昨年ワールドカップ決勝戦以来の代表でのゴールらしい。それよりも彼女のコンディションが上向いている事が大事だろう。そして御役目御免とばかりに直後に田中明日菜と替ってベンチに下がった。
Matildas ベンチは60分に Emily Gielnik を Kate Gill に替えて、 Katrina Gorry を Alanna Kennedy に替えてそれぞれ投入し2人の Matildas デビューをさせた。 しかしなかなか Matildas はシュートシーンを創れない。 競技場に来ればなでしことの違いは一目瞭然だ。 パスは足元ばかりで3人目の動きが無い。更にパスアンドゴーがなかなか出来ていない。そして Kyah Simon にボールが入った時しか何か起こりそうな気がしない。 後半から入った Walsh も思う様なプレーが出来ない、と云うよりもなでしこ達がそれをさせない。 2006年に Adelaide で行われたAFC Womes’s Asian Cup でなでしこは Matidas に敗れたがその試合では Matildas 選手達のキックのレンジの長さの違いに驚かされた。そしてゴール前や中盤での当たりの強さも。しかし今はなでしこ達もキック一発でサイドチェンジが出来るし、この試合でも Matildas とは互角以上のあたりの強さをみせいていた。
Matildas は71分に Simonが放ったミドルが GK 海堀の正面に飛んだ時くらいしか国立競技場を沸かせられなかった。
なでしこの方は次々に選手を交替させる。71分には大儀見に替って丸山佳里奈を投入した。我が故郷高槻市の市長からも激励を受けた写真を見た…。
76分に宮間が下がって高瀬が投入されたのでこの試合でのマラドーナ岩渕の出番は無くなった。
88分に近賀のクロスを正面で受けた田中明日菜が Matildas ゴールに蹴り込んだけどこれは明らかなオフサイド。そして2分あったロスタイムも過ぎタイムアップとなった。
試合後かつてサンフレッチェ広島でコーチの経験のある Tom Sermanni 監督は “恐らく今日感じた事はボール支配率を上げるのには大変難しいスペイン代表やBarcelonaを相手にした時と同じだろう。我々は大変なプレシャーを受けた。正直レベルの違うチームを相手にした様だった。そしてこの試合の日本は素晴らしかった。我々はただそれに付いていけなかった。 何人かの若い選手にとってはこのレベルの試合を経験した事が良いチャンスであっただろう。(日本、ニュージーランド戦の)3試合で6人の選手が代表デビューを飾った。我々はまさにチーム再建の始まりにあるが、何人かの才能ある選手がやってきた事を今夜示す事が出来た。”この様に語った。
次回日本が Matildas と対戦する時はなでしこのメンバーが大きく変わっている事だろう。
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