鳥取砂丘(続々)

 
 私も続いて、思い切って砂を滑り降りた。と言うより、ずり落ちた。私が落ちる後を追って砂が崩れ落ち、浜辺まで降りて振り返って見ると、その軌跡は一筋の溝となって残っている。が、次々と上から砂がこぼれてきて、見る間に私のずり落ちた軌跡を埋めてゆく。
 う~む、これが砂の力。砂でできた落とし穴にでも落ちた日には、脱出なんてできっこない。「砂の女」にあるとおり、砂掻きこそシシュフォス労働の極致に違いない。
 
 波に沿って砂浜を歩いた。すぐ横にそびえる砂の丘さえなければ、普通の砂浜と同じ。いい感じー。
 ……が、いくら歩いてもキリがないから、途中で起伏の緩やかなところを見つけて、引き返す。

 人がいなければ、砂にはきれいな風紋ができる。風紋に足跡を残すのは、積もりたての無垢の雪に足跡を残すような気分。
 が、振り返るとやっぱり、さらさらと砂がかぶさって、足跡はすぐに消えてゆく。

 もう一つ、ひときわ大きな砂の丘を越えたら、さっきの駱駝たちが見えるはず。ズブズブと砂に足をめり込ませながら、ひたすら斜面を登る。周りを見ると、サラリーマン風のおじさんたちも、ヤンキー風のにいちゃんたちも、みんな、ふうふう言いながら砂の斜面を登っている。
 やっとこさ登り切ると、眼下には池が! 砂漠には砂の下に水が溜まっているというもんね。昨日雨が降ったせいで、にわかに湧き出てきたんだな、きっと。
 砂を降りるのも2度目になると、もう慣れたもの。足許に池があるのがちょっと怖いけど。土砂崩れならぬ砂崩れを伴いながら、ズボズボと降りる。はるか隣りで若いにいちゃんたちが、キャーキャー叫びながら斜面を駆け降りている。あー、健全でいいねー。

 やっと駱駝のところに戻ってきた。ただいま、駱駝。
「ホントに砂しかなかったでしょ」と相棒。
「うん、ホントに砂しかなかったよ」と私。

 駱駝にお別れの挨拶をすると、駱駝の奴、へにゃ~、と笑って見送ってくれた。

 To be continued...

 画像は、鳥取砂丘、雨後のオアシス。

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