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リアリズムの旗手

 

 「クールベ美術館展」に行ってきた。ギュスターヴ・クールベ(Gustave Courbet)は私の好きな画家の一人。19世紀絵画のなかでも、クールベの絵はかなり力強い位置を占めている。
 
 歴史画以外のほとんどあらゆるジャンルの絵を描いているクールベだけれど、とりわけ私が好きなのは風景画。故郷オルナンの風景や、海景が有名で、特にオルナンの緑したたる岩がちの風景は、クールベ色と形容できるほどの独特の色彩。
 私は結構長いあいだ、クールベが断崖や谷間を取り上げるのは、彼の性格によるものだと思っていた。が、どうもオルナンそのものが、そうした景色であるらしい。オルナンはジュラ山脈にある小さな町で、スイス国境に近い、森と牧草地に恵まれた山岳地帯だが、オルナンそのものは岩だらけの峡谷なのだそう。是非行かねば。

 写実主義の旗手と評価されるクールベだが、彼自身はそのレッテルを快く思っていなかったらしい。彼の絵の技法自体も特に新しいものではなく、例えば、絵を仕上げる手法は従来のやり方を踏襲しているし、本人、のちに卑下して、独学だ! と言い張っているが、ルーブルに通って作品を模写するという古典的なやり方で、絵の訓練を積んでいる。

 クールベのリアリズムはむしろ、幾分挑発的な、そのテーマに現われていると思う。労働にいそしむ人々、醜い裸婦、ナルシスティックな自画像。ハンサムで自信過剰で、デリカシーに欠けると見える態度をわざわざ取るクールベが、ジャーナリズムの槍玉に上がったのは、よく分かる。きっと私も実際に同時代、クールベという人物を知っていたら、何、こいつッ! と思っただろうし、壊さなくてもいい記念碑を壊して逮捕されたり亡命に追い込まれたりしたときには、自業自得だッ! と思っただろう。
 が、手厳しい批評家も、彼の技量には文句をつけなかったというから、いずれにしても一流の画家だったのだ。

 さて、私は以前どこかで、クールベは弟子を取るのを嫌がった、と読んだことがある。が、今回、クールベには数多くの弟子がいて、カリスマ的に彼らに慕われ、ほとんど彼らの描いた絵に自分のサインまで入れていたことが分かった。
 クールベってやっぱり、傲慢な男だったんだねえ。

 画像は、クールベ「シヨン城」。
  ギュスターヴ・クールベ(Gustave Courbet, 1819-1877, French)
 他、左から、
  「眠る糸紡ぎ女」
  「スペインの婦人」
  「浴女」
  「波」
  「ピュイ・ノワールの渓流」

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