ギリシャ神話あれこれ:12の功業その10

 
 難業その10は、ゲリュオンが飼う赤牛たちを生け捕りにすること。この頃から、エウリュステウス王の命令はだんだんエスカレートしてくる。

 ゲリュオンは世界の果て、はるか西のかなたのエリュテイア島に住まうという。太陽の没する西の果ては、死者の赴く地とされる。要するに、生きた人間の踏み入れない地であって、ヘラクレスもいよいよ、死地へと向かうことになる。

 ヘラクレスは赤牛を目指して、西へ、西へと進む。先々で野獣を退治しながら、ヨーロッパ、さらにアフリカのリビアを横断し、ついにタルテソスにたどり着く。
 思えば遠くへ来たもんだ。ヘラクレスは旅の記念に、ヨーロッパとリビアに、向かい合わせて、カルペとアビラという2つの山を作った(あるいは、巨大な岩柱を建てた)。これらは今でも、ジブラルタル海峡を挟んで南北に聳え、「ヘラクレスの柱」と呼ばれている。

 さて、あまりに暑かったので、気の短いヘラクレスは、うがーっ! 癇癪を起こして、太陽に向かって矢を放った。
 が、太陽神ヘリオスは、却ってヘラクレスの豪快なところが気に入ったらしい。寛容にも、彼がオケアノスを渡るのに使う大きな黄金杯を貸してやる。

 オケアノスは世界の果てをぐるりと取り巻く極洋。で、ヘラクレスはそれに乗ってオケアノスを渡り、西の果て、エリュテイア島へと到着する。

 ゲリュオンは、メドゥサの血から生まれたクリュサオル(黄金の剣)の子で、ケルベロスやヒュドラら怪物たちの母である半人半蛇エキドナの兄に当たる。
 一つの胴体から、首が3つと手と足が6本ずつ、さらに3対の翼が生えた怪物の姿をし、たくさんの赤い牛を飼っていて、それらを牛飼いの巨人エウリュティオンと、双頭の番犬オルトロスとに番をさせていた。

 To be continued...

 画像は、スルバラン「カルペとアビラの山々を隔てるヘラクレス」。
  フランシスコ・デ・スルバラン(Francisco de Zurbaran, 1598-1664, Spanish)

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