ほっとけない軽率さ

 
 昨今、日本版「ホワイトバンド・プロジェクト」なるものが批判されている。

 「3秒に1人、子供が貧困から死んでいます」という、強烈なキャッチコピー。「貧困をなくそう、という声を表わすホワイトバンドを身につけてください」という、分かりやすい提起。おまけにCMで、白い腕輪をつけた著名人らが、3秒ごとにパチンと指を鳴らすポーズから来る、インパクトとファッション性。
 で、ゴム製の白い輪っかは瞬く間に広がり、売上金は現時点で10億円近くになるのだとか。

 叩けばいくらでもホコリの出るらしいこのプロジェクト、どうやっても言い逃れできない過失が、大きく2点ある。

 一つは、アイテムを販売する際に、「この売上金は現地への寄付にはまわらない」と明示しなかった点。購買者に「募金だ」とあえて勘違いさせたままで、アイテムを売る手口は、平たく言えば募金詐欺。
 もう一つは、アイテムを所持することで、表明することになる「意思」の内容を、明示しなかった点。この「意思」とは、「貧困をなくす政策を選択する意思」なのだが、この「政策」内容は実は狭くて、「無条件の債務放棄とODA増額」。つまりこの運動は、ロビー活動を推進する運動なわけ。ちなみに、この政策では貧困問題は解決しまい、というのが私の意見。

 プロジェクトのHPには当初から説明があったが、アイテムを売る以上、その外箱にでも説明を載せておくべきだった。

 社会的批判が上がったせいか、プロジェクト側もにわかに、売上金のうち3000万円近くを寄付すると言い始めた。これじゃ、募金詐欺だったと自認したようなものだ。が、プロジェクト側のほうは、個人でも拠出可能なこの額を却って自画自讃している。
 だがこの寄付は、募金と誤解して買った人なら、額が少なすぎると思うだろうし、募金でないと了解して買った人なら、公約違反と思うだろう。いずれにしても裏切りだ。
 
 間違っていたから方針転換するなら、その前にまず謝罪すべきであって、こういう曖昧な対処が、私は一番嫌いだし許せない。あ~、ぞぞ毛が立つ。

 To be continued...

 画像は、ステヴァンス「腕輪の女」。
  アルフレッド・ステヴァンス(Alfred Stevens, 1823-1906, Belgian)

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