箱根の山

 
 ビュフェ美術館の翌日は箱根。お目当てはポーラ美術館の「印象派展」。
 この日本国内、風光明媚な自然を別として、どんなに有名な観光地でも、そこにホンモノの美術館がなければ、私はおそらく足を向けまい。箱根に何があるのかはよく知らないけれど、この美術館だけは絶対に充実している。
 
 箱根は初めて。日本国内とはいえ、知らないところに行くのは、やっぱり単純素朴な楽しみがある。
 登山鉄道に乗って、強羅まで。スイッチバックで行ったり来たりしながら、山を登っていく。線路沿いには紫陽花が植わっていて、電車が通ると、咲き残った花がゆさゆさと揺れる。花期には紫陽花の壁ができて、さぞ見事だろうな。
 
 強羅からは、施設めぐりバスに乗って美術館まで。が、待ち時間があったので、アジサイソフトクリームなるものを買ってみた。
「これ、紫陽花が入っているわけじゃないよね?」と尋ねてみると、
「いや、入ってますよー」という返事。
 マジ? 紫陽花の花の絞り汁でも入っているのかな。少し酸っぱいような、冷菓の冷たさとは別の、涼しい感じの味だった。

 しかし、有名な観光地と言っても、そのスポットならではの景色があるわけじゃない。全国、同じようなレストランに、同じような土産物屋。車が多いから排ガス臭いし、人が多いから煙たい。どうして日本て、どこもこんな感じなのかねー。
 
 美術館は森のなかにあった。緑が多くて、いい感じ。キビタキ(多分)が朗らかにさえずっている。

 が、仕方のないことかも知れないけれど、軽井沢同様、観光ついでに寄ったような集団客が大半で、鑑賞態度はチョベリバ。おまけに、マネとモネとを混同するし、群れ飛ぶ黒い鳥をツバメと言う。一人が言ったら、真偽に関係なく、みんながうなずく。おいおい、普通、ツバメが群れで飛ぶか?
 分からないなら分からないで、黙って観ていればいいものを、何か言わずにはいられないらしく、しかも、相手に差しさわりのないことを言おうとするから、一人が間違うとみんなが間違え合って、手を取り合って仲好くデタラメな方向へと突き進んでゆく。道中お気をつけて!

 が、展示されている絵については、文句なし。たっぷり3時間はかかった。
 
 To be continued...

 画像は、ルノワール「レースの帽子の少女」。
  ピエール=オーギュスト・ルノワール(Pierre-Auguste Renoir, 1841-1919, French)

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