ギリシャ神話あれこれ:アトレウス兄弟の復讐合戦(続)

 
 あるとき、兄アトレウスは奴隷市で、美しく品の良い女奴隷を一人買う。彼女はアエロペといい、実はクレタの王カトレウスの娘なのだが、自身の子に殺されるとの神託を受けた王が、奴隷として異国に売りとばしてしまったのだった。
 さて、アトレウスはアエロペを侍妾にしていたが、やがて彼女の高貴な出生を知るに及んで、正妻として迎えることにする。

 だが一方、おそらく奴隷の身分だった頃から、アエロペは、アトレウスの弟テュエステスとも姦通していた。アトレウスの妻となってからも、義弟テュエステスとの情交は続く。

 ところで兄アトレウスは、ミデアの繁栄を神に感謝し、毎年、新しく生まれた仔羊のうち最上のものを狩猟神アルテミスに捧げることを誓っていた。その志を試そうとしたのだろう、アルテミス神は黄金の仔羊を生まれさせる。
 奇跡のようにポッコリ生まれた金ぴかの仔羊! にわかにアトレウスは仔羊が惜しくなり、それをこっそりと絞め殺して、金の毛皮を箱のなかに隠しておいた。

 ……神々への誓約を反故にしたのだから、普通なら、神の怒りによる嵐やら飢饉やらの直截的な制裁が次に来るのだが、そうなっていない(?)のがちょっとよく分からない。が結局、この金羊毛は、一族の以降の不貞やら奸計やら復讐やらを引き起こすメイン・アイテムとなっているので、怒れる神もそれ以上の手出しをしなかったのかも知れない。

 その頃ミュケナイでは、ステネロス王の亡き後、その息子エウリュステウスが王位を継いでいた。
 エウリュステウスは、かの英雄ヘラクレスに12の難業を課した王で、臆病で尻弱なくせに権力には執着するという卑劣な輩。ヘラクレスの死後、その後裔がミュケナイ王位を狙うのではないかと怖れた王は、彼らを殲滅せんものと追跡を始める。

 To be continued...

 画像は、ベッツィ「テュエステスとアエロペ」。
  ジョバンニ・フランチェスコ・ベッツィ
   (Giovanni Francesco Bezzi, 1549-1571, Italian)


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