廃墟の城のある町(続々々々々々)

 
 先にも言ったが、夕食はバイキング形式。絶えず子供たちが、料理やドリンクを取りに行ったり来たりする。
 私は素知らぬフリしてノートにポッター少年を描きつけたのだが、それを、あの眼の大きな、好奇心の塊のような小さな少年が、後ろから覗いていたらしい。私は続いてその同じノートに、その日の出来事を書き並べながら、男の子がポッター少年に何事か耳打ちし、ポッター少年が飛び上がって、顔を赤らめながら笑ったのを、眼の端に見たように思う。

 で、日記を書いていて、ふと顔を上げてみると、子供たちの例の一団が、何やら曰くありげに、笑いながらこちらをチラ見している。料理やドリンクを取りに行く子たちが、その行きがけ、帰りがけに、わざわざ私の後ろ側にまわって、ノートを覗き込んでいく。それも、申し合わせたようにさりげない様子で、入れ替わり立ち替わりやって来る。当のポッター少年も、みんなと同じように覗きに来た。
 ……うーむ、隠れて描いたつもりが、完全にバレてる。こうなるとポッター少年よりも、私のほうが恥ずかしい。

「子供だから、肖像権の侵害だ、って怒ってくることはないよ。子供は好奇心があるし、描いてもらいたがるからね」と相棒が笑う。

 ここまでバレてるんなら、もう仲好くなるしかない。私はあの、眼のクリクリと大きい男の子に、「ハウ・オールド(何歳)?」と尋ねてみたが、通じない。「エイジ(年齢)?」と訊くと、男の子は合点したように頷いて、指で13と教えてくれた。
 これくらいの年齢の子供が、一番可愛いのかも知れない。いかにも子供らしい、対象に向かう真っ直ぐさと好奇心、リアリズムがあって、一方で人間特有の社会関係を意識し始めてもいて。

 To be continued...

 画像は、ホンブルク、ユースホステルのカフェ。

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