ギリシャ神話あれこれ:大地と天空

 
 ギリシャ神話というのは、性について、いかにもあっけらかんとしている。神々は平気で情交を重ねるし、セックスによって子を産む(そうでない場合もある)。性転換や両性具有、去勢なんてテーマも登場する。男神には、きちんとペニスがついている(私は、人間の身体器官のなかで一番ユニークなのは、男性のペニスだと思う)。
 ギリシャ神話の人間臭さというのは、こういうところにもある。 

 ギリシャ神話での世界の起源。最初にカオス(混沌)が生まれる。これは、何もない無限の広がり、というイメージ。次いで、大地神ガイア(テルス、テラ)が生まれる。ガイアは大地そのものでもある。
 このように原初神というのは、自然そのものをも表わす、自然の単なる神格化。

 ガイアは一人で、天空神ウラノス(カイルス)と海神ポントスを産む。彼らはそれぞれ、天空そのもの、海そのものでもある。

 さて、大地ガイアは、自分を覆いつくす天空ウラノスと交わって、男女神それぞれ6神ずつを産む。彼ら12神をティタン(タイタン)神族、いわゆる巨神族、という。ガイアの夫ウラノスは神々の王となる。
 ガイアはさらに、一つ眼巨人のキュクロプス(サイクロプス)、百腕巨人のヘカトンケイルを、3神ずつ産む。が、ウラノスはその奇怪な姿を忌み嫌い、彼らを地底タルタロスに放り込んでしまう。この行為はつまり、彼らを大地ガイアの胎内深くに押し戻すという暴挙なわけで(痛いだろーな)、ガイアはこの仕打ちをひどく恨む。

 そこで彼女は謀計をめぐらし、金剛の大鎌を作って、子神たちにウラノスへの復讐を訴える。尻込みする子神たちのなか、末弟のクロノスが進み出る。
 夜、ウラノスがガイアの上に正体なく覆いかぶさった隙に、ウラノスは大鎌を手に立ち現われ、ウラノスの男根を切り落とす(痛いだろーな)。
 これによって、天空ウラノスは大地ガイアから離れる。つまり、天と地は永遠に分離する。とともに、ウラノスは神々の王座を奪われる。ウラノスは不名誉な傷を恥じ、二度とガイアのもとには訪れなかった。

 ところで、ウラノスの傷口から噴き出した血潮からは、復讐の女神エリニュスらが生まれた。また、切り取られた男根は海へと放り込まれたのだが、やがて白い泡が肉のまわりに湧き立ち、愛と美の女神アフロディテが生まれ出た。

 ウラノスは天王星の名前。

 聖書には、真理と信ずるに足る創世記があって、ビッグバン宇宙論をすら、「あれは聖書の“初めに光ありき”の正しさを実証するものだ」と主張するクリスチャンもいるくらい。それに比べると、このギリシャ神話の創世記って、いかにも人間臭い。真理と信じなくても、文句は言われまい。

 画像は、バーン=ジョーンズ「母なる大地」。
  エドワード・バーン=ジョーンズ(Edward Burne-Jones, 1833-1898, British)

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