ギリシャ神話あれこれ:アフロディテ

 
 私は異性に対する「恋愛」というものがよく分からない。「友愛」と「性愛」しか分からない。心ときめく気持ち、切なく恋焦がれる気持ちというのは分かるのだが、そこに含まれる「愛」というのは、やはり「友愛」あるいは「性愛」であるような気がする。……ま、私が恋愛下手なだけかも知れない。
 ちなみに私の愛情の定義は、相手の幸福を自分自身の幸福と感じること。

 アフロディテ(ウェヌス、ヴィーナス)は、美と愛と官能の女神。切り落とされて海に漂うウラノスの男根に生じた泡から、誕生したという。
 別伝では、ティタン神族のディオネを母とする、ゼウスの娘ともいう。ま、オリュンポスでの彼女の権勢を考えれば、それくらいの十分な血筋のほうが妥当かも。

 美と愛を司るだけあって、女性の美の典型とも言うべき絶対の美貌を持つ。その姿は甘美で魅惑的。白鳥の牽く車に乗り、優雅の女神カリテスや季節の女神ホーライを連れて、まさに神界の花、って感じ。
 同じく愛の神であるエロスを子に持ち、共に神々や人々の恋情を灯してまわる。彼女は、それを巻いた者への恋情を抗えないという、ケストスという帯を所有している。

 こんな、周囲を色めき立たせる彼女の夫は、オリュンポス一醜い、鍛冶神ヘファイストス。月とスッポンという発想は大昔からあったものらしい。人間臭いギリシャ神話らしい設定。
 これはヘファイストスがゼウスに、彼ならではの技工の褒美として、アフロディテを所望したためだという。

 が、彼女のほうは、自分にあてがわれた醜い夫が気に入らず、夫以外の神あるいは人間と、奔放に情交を繰り返す。公認の愛人である軍神アレスのほかにも、伝令神ヘルメスや酒神ディオニュソス、海神ポセイドン、絶世の美青年アドニス、と、錚々たる顔触れ。
 神々や人々に恋愛させる傍ら、自ら率先して大いに恋をする。が、情事に飽きると、彼女はいつも、愚直な夫ヘファイストスのもとへと帰ってくる。

 ヴィーナスは金星の名前。

 どうも、美しくはあるが、自己チューでパープリン、というイメージがあるのだけれど……偏見かな。

 画像は、カバネル「ヴィーナスの誕生」。
  アレクサンドル・カバネル(Alexandre Cabanel, 1823-1889, French)

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