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魔法の絨毯 -美術館めぐりとスケッチ旅行-

 世界をスケッチ旅行してまわりたい絵描きの卵の備忘録と雑記

地図作り

2004-12-21 | 森と湖の国
 
 私は世界旅行のポイントをチェックした世界各国の地図を、手許に持っている。
 図書館で旅行ガイドブックを借りて地図をコピーし、いい感じー、と思った風景の地方をチェックする。サイトで観た、いい感じー、と思った絵を所蔵する美術館の場所も調べて、その地図にチェックを入れて書き込んでいく。ついでに、文学や音楽にゆかりのある地方もチェックする。
 で、次から次へとチェックするうちに、私の分厚い地図の束はチェックだらけになってしまった。一つの街や村に2~3日滞在するにしても、とても10年やそこらでは周れそうにない。どーしよー。

 日本社会はいよいよファシズムの色を濃くしているし、徴兵制だってもう絵空事ではなくなってきている。
「アホしか我慢できない社会だ」と相棒は言う。「早く日本を脱出しなきゃならない。永住権を取るとなると簡単じゃないから、3ヶ月くらいその国を旅行して、期限が来たら次の国に移動して、また3ヶ月くらい暮らして……というふうに、旅行し続けたらどうだろう」と言う。

 相棒がこう言い出したのは、もうかれこれ6~7年前。私も最初はそれを話半分にしか聞いていなかった。でも、ここ数年の間に、日本はあっと言う間に馬鹿になった。そして危険になった。
 で、私も地図を作り始めた。絵の練習もし始めた。

 画像は、フィッセル「ニューイングランド地図」。
  クラース・ヤンツ・フィッセル(Claes Jansz. Visscher, 1587-1652, Dutch)

美術館めぐり

2004-11-08 | 森と湖の国
 
 幼い頃から母に連れられて、美術館の絵画展を観てまわった。その反動で中学、高校と、美術館から足が遠のいたが、大学に入ってから再び自分で、美術館に足を向けるようになった。
 今では相棒と一緒のときだけ、美術館に出かける。
 
 随分といろいろ見てまわったから、絵画の通史とか、画家の絵の特徴とかも一応、自然と理解できるようになった。自分なりの好みや評価も定まってきた。
 シリーズもののポピュラーな絵画書を図書館から借りてきて読んだり、テレビの絵画番組を見たりもして、教養程度の知識も身についた。

 こうなると、日本の美術館ではなかなか物足りなくなってくる。常設展では、お腹いっぱいにならないし、企画展では、大勢の趣向に合う人気メニューばかり供されて、いささか食傷ぎみ。

 ヨーロッパの美術館には、日本が高いお金を出してようやく貸してもらえるような絵が、どっさりと展示されているという。世界を旅してまわるなら、そのときは世界の美術館もめぐって歩こう。

 画像は、ドガ「美術館訪問」。
  エドガー・ドガ(Edgar Degas, 1834-1917, French)

森と湖の国(続)

2004-11-07 | 森と湖の国
 
 だが、なんという高さだろう。そそり立つ森の木々が、挑むようにいっせいに私たちを迎えた。

 ふと、その木々の合間に、真っ黒いぼろ雑巾の塊のようなものが、その切れ端を引きずりながら、ゆっくりと動いているのに気がついた。
「あれは何?」
「彼は画家だよ。絵筆の握れなくなった、それでも必死で描こうともがいている、年老いた画家だ」
 ぼろぼろの黒衣のなかから老人の白い髭と、硬く丸まった石のような手が見えた。私はあの画家を知っている。なぜあれがここにいるのだろう。あれは南の、もっと太陽の光を浴びた国で、オリーブの林のなかで暮らしているはずなのに。

 私は老画家の姿を見送った。そしてバルコニーの手すりにのぼって、友人の手をつかんだ。彼は首を振った。
「この高さから飛び降りることはできないよ」
「大丈夫、私は空を飛んでここに来たんだから」

 彼は優しい諦め顔で微笑んで、私の言いなりにした。私は彼を胸に掻きいだき、再び空へと飛び立った。彼を連れて帰れるのだ。湖まで行けば、湖まで行けば……

 だが、私の遠く背後から、ピアノの音色が届いた。私が両手を開くと、胸に抱いたはずの友人はもういなかった。
 私は引き返した。だがもう遅いのだと分かっていた。ピアノの旋律は森に漂っているのに、あの館を二度と見つけることはできなかった。
 ……

 私にとって夢は、ときおり現実と見紛うことがある。あの北欧の風景は私を捉えて離さない。
 いつかきっとめぐりあえる、そう思っている。

 画像は、ソールベリ「漁師小屋」。
  ハラルド・ソールベリ(Harald Sohlberg, 1869-1935, Norwegian)

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森と湖の国

2004-11-06 | 森と湖の国
 
 最初に行く国は、森と湖の国がいいとずっと思っていた。以前、今は亡き友人が呟いたことがあるから。
「どこか、森と湖しかない国で、何かに没頭できたら最高だろうな」
 
 森と湖の国がどこにあるのか、よく分からない。でも、なぜだか北欧を想像した。

 私は北欧の空を飛んだことがある。ただし夢のなかで、だけれど。
 北欧の空は冷たく、冴えて、透明だった。濃い緑の森のなかに、ひっそりとたたずむ館があった。そこから、ピアノの音色が聞こえてくる。亡き友人はピアニストだった。
 私はその館のバルコニーに降り立った。フランス窓を開くと、部屋には懐かしい友人が立っていて、私を迎え入れた。私は彼の手を握った。
「こんなところに一人でいたの? ねえ、一緒に帰ろう」
「無理だよ。この部屋には出口がない」

 広い部屋だった。私は部屋をひとわたり見まわした。だが本当に、部屋には扉がないのだった。
「大丈夫、窓から出よう」
 私は彼の手を引っ張って、自分が今入ってきた窓からバルコニーへと躍り出た。

 To be continued...

 画像は、ガッレン=カッレラ「ケイテレ湖」。
  アクセリ・ガレン=カレラ(Akseli Gallen-Kallela, 1865-1931, Finnish)

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世界旅行に行きたい

2004-11-05 | 森と湖の国
 
 世界を旅行しようと思い始めたのは、かれこれ7年前のこと。相棒がぽつりと呟いたのがきっかけ。
「世界を旅してまわりたいね」
 そうだ、と思った。私はごく若いときに、一人で子供を産んで、大学に通いながら必死に育てた。だからまだ外国に行ったことがない。

 絵を描こうと思い始めたのは、つい2、3年前のこと。相棒がぽつりと呟いたのがきっかけ。
「絵描きにでもなろうかな」
 そうだ、と思った。私は幼い頃から、落描きで白紙を埋め尽くしてきた。でもまだ本格的に絵を描いたことがない。

 最近ようやく油絵を始めた。水彩のほうが安直に描けるけど、やっぱり絵はタブローで描いてみたかった。

 美術の授業で使った油彩セットを引っ張り出して、絵具の蓋をこじ開け、固まった筆を解きほぐした。イーゼルとキャンバスは新しく買った。
 静物から始めるのがやりやすいらしいけど、人物を描いてみたかったので、思い切って自画像にした。ど素人初心者の私にとって、自分をモデルにするのは、それが一番お手軽、お気楽だから。絶世の美女かナルシストでもなければ、自分の姿なんてそうそう描く気にもなれない。

 やっと最初の一歩を踏み出せた感じ。これで足は世界旅行のほうを向いたかな。とりあえず、しばらくは絵具まみれになりながら、第1作目を仕上げるつもり。

 画像は、サージェント「スケッチするポール・エリューと妻」。
  ジョン・シンガー・サージェント(John Singer Sargent, 1856-1925, American)