チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
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第168話 柱時計

2009年07月12日 | チエちゃん
 チエ~、時計止まったがら、巻いどいで~

屋外から、お母さんの声がしました。

 うん、わがった~

 チエちゃんは、道理で何だか静かだと思ったのでした。
チエちゃん家の柱時計は1時間ごとに、その時刻の数だけ、ボーン、ボーン、ボーンと打ち、30分にはボーンと1回だけ打つのでした。
静かにしていれば、チクタク、チクタクという音が聞こえます。

 チエちゃんは廊下の隅っこから、踏み台を持ってきて、茶の間の時計の下に据えました。
チエちゃんの家では、時計のねじを巻くのは、ずっとおじいちゃんの仕事でした。
でも、最近では、おじいちゃんからねじの巻き方を教わったチエちゃんもできるようになっていたのです。

 踏み台に上ったチエちゃんは、時計の蓋を開けました。
中には、ねじを巻くための道具、鍵状のねじ巻きが収納されています。
それを取って、文字盤の中にあるねじ穴に差し込み、ぜんまいねじを巻くのです。
ねじ穴は左右に2つあって、どっちからでもよいのですが、右利きのチエちゃんは右側からやります。
最初は軽く回るのに、ねじが締まってくると、だんだんきつくなってゆきます。
10回ねじ巻きを回しました。続いて、左側。
それから、止まっていた振り子を指でツンと強く押しました。

時計は、また、チクタク、チクタクと動き始めました。
このとき、チエちゃんはいつも思ったものです。
私が振り子を押す力は弱すぎて、すぐにまた止まってしまうのではないかと。


しばらくして振り子が止まらないことを確認したチエちゃんは、静かに時計の蓋を閉めました。