チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
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第202話 小名浜の魚屋さん

2019年05月15日 | チエちゃん
 は~るばる来たぜ 函館へ~
 さ~かまく波を 乗り越えて~

萌黄色に輝く山並みの彼方から五月の風に乗って、サブちゃんの歌が流れてきました。
庭で遊んでいたチエちゃんは急いで母屋へ駆け込みました。

 ばあちゃん、おなはまの魚屋さんが来たよ!

 そうがい!? ばあちゃんには、なあんにも聞こえないけどな・・・
 チエは耳がいいなあ。
 なあに、まだまだ遠いからあわてるごどはねえさ。

そう言いながらも、おばあちゃんは奥の部屋に行き、桐箪笥の引き出しからきんちゃく袋を取り出したのでした。

 後は追うなと言いながら 後ろ姿で泣いてた君を
 思い出すたび逢いたくて・・・

サブちゃんの歌声はだんだん大きくなっているのに、魚屋さんのトラックはなかなか見えません。
待ちくたびれた頃にようやくトラックがチエちゃん家の下の県道に停まりました。チエちゃんとおばあちゃんが坂道を下りていくと、無精ひげのおじさんが、
「毎度おなじみ、おなはまの魚屋です!」と威勢の良いあいさつをしてくれます。

おじさん:今日はない、活きのいいギンダラと赤魚が入ってるよ!
そう言って、見せてくれたのはカチンコチンの魚の切り身でした。
(当時は子どもだったので何とも思わなかったが、冷凍でも『活きがいい』というのだろうか?)

おばあちゃん:そうだない、ほんじは赤魚を10切れも、もらうべが。

おじさん:へい!毎度あり!

おじさんが魚の切り身を包んでくれた新聞紙を抱えて、おばあちゃんとチエちゃんはお家に戻りました。
その夜のおかずは、もちろん赤魚の煮つけです。
小名浜の魚屋さんはトラックにたくさんの魚を積んで、春と秋にやって来ました。チエちゃん家ではそれを楽しみにしていたものです。

※このお話しには後日談があるのですが、それは明日をお楽しみに。