チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
+昭和50年代~現在のお話も・・・

ようこそ! チエちゃんの昭和めもりーずへ

はじめての方は「チエちゃん」のカテゴリからお読みいただくことを推奨しています。 もちろん、どこからお読みいただいてもかまいません。

第156話 学芸会

2008年11月06日 | チエちゃん
 木枯らしが吹く季節を迎えるそのホンのちょっと前に、チエちゃんの通う小学校では学芸会が催されていました。
あの頃すでに「学習発表会」と呼び方は変わっていたけれど、その中味は劇・お遊戯・歌・器楽合奏など「学芸会」と少しも変わってはいませんでした。

 その年、チエちゃんたちの出し物の一つは「とおりゃんせ」の器楽合奏でした。
例の如く、村の合同音楽会で発表したのですから、もう2ヶ月以上も練習を重ねていました。
チエちゃんの担当はビブラフォーンで、二分音歩とか四分音符ばかりが並んでいるパートでしたから、お気楽に参加していたのです。
 それに比べて、鉄琴を担当しているスミ子ちゃんは、主にメロディ部分を演奏し、特に最初の部分の「と~おりゃんせ、とおりゃんせ」は全くのソロ演奏なのです。
鉄琴のソロ演奏の出来次第で、曲全体が決まってしまうため、演奏が速過ぎるとか、遅すぎる、もっと弱く丁寧にと何度も小木先生に注意され、よこで見ていても、大変そうだなと思いながらも、スミ子ちゃんのせいで、何度も繰り返し練習させられ、もういい加減にして欲しいと心の中ではうんざりしていたのも事実でした。

 ところが、学習発表会まであと10日程に迫ったある日、スミ子ちゃんが急性盲腸炎で入院してしまったのです。
さあ、困った!
メロディパートの鉄琴なしでは、この曲は成り立たないのです。
そこで、白羽の矢を立てられたのは、チエちゃんでした。
 ええ~っ、そんなあ! 

いくら隣で、演奏を見ていたからって、全然違うし、あんなに注意されていた難しいパートをたったの10日間で覚えるなんて、無理!
でも、先生はチエちゃんの言訳など全く無視して、決めてしまった・・・
やるしかない・・・

それから、チエちゃんは必死で「とおりゃんせ」を覚え、スミ子ちゃんと同じように先生に注意されながらも、当日を迎えたのでした。

 会場の講堂は、お客さんで満員です。
チエちゃんは、逃げ出したい気持ちでした。
でも、舞台に上がると、まな板の上の鯉状態とでもいえばよいのでしょうか、もうどうにでもなれという気持ちになって、演奏は終了したのでした。
果たしてうまく出来たのか、失敗だったのか・・・
もうそんなことはどうでもよく、とにかく終わったという開放感に浸った学芸会なのでした。


 ララソ ラーラソミー
 
  シーシシレーシラ シラソソラ