元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「男たちの大和 YAMATO」

2006-02-07 06:45:00 | 映画の感想(あ行)
 期待していなかったが、面白く観た。何より余計なイデオロギー色が一切ないのが良い。

 あの戦争が聖戦か侵略か、戦争責任はどこにあるか、沖縄戦の真実はどうだetc.そんなことには全く言及しておらず、それどころか米軍側に正面からカメラを向ける部分も皆無だ。作者の目は徹底して乗組員と彼らを待つ家族・恋人たちに注がれる。

 決して常軌を逸していたわけでも、軍国主義に冒されていたわけでもなく、敗色濃厚だということも知りつつ、ただ一途に“国を守りたい”という意思だけで戦地に赴く男達。そしてそれを見守る家族。その純粋さが切ない感動を呼ぶ。

 佐藤純彌の演出タッチはあまり垢抜けておらず、特に登場人物達が大和に乗り込むまでの各キャラクターの動かし方は古くさい。だが、物語を大和の生き残りを父に持つ女性(鈴木京香)が父の同僚だった船長(仲代達矢)から当時のことを聞かされるという、いわば回想形式になっていることで(現代の場面も適宜挿入されることにより)あまり気にならなくなっている。

 戦闘場面は文句なし。邦画でよくこれだけ頑張ったものだと思う。だが、そこで予算を使い切ったのか、大和の全景さえ映せなかったのは痛い。そして沖縄水上特攻作戦に参加した艦艇は大和以外にも何隻かいたはずだが、それらの影も形もない。いまひとつの脚本のフォローが必要だった。

 出演者陣は中村獅童および松山ケンイチはじめとする年若い兵士役は悪くなかったが、反町隆史は相変わらずの大根。何とかして欲しかった。それより主人公達を送り出す立場を演じた蒼井優と寺島しのぶが印象的で、彼女たちのエピソードを入れたことにより、戦争の悲劇の描写がより一層深まったと言えよう。
コメント (3)
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