(原題:Unhook The Stars)96年アメリカ作品。夫に先立たれ、溺愛していた息子は家を出て独立し、素行の悪い娘も家を飛び出し、仕方なく一人暮らしを始めたミルドレッド(ジーナ・ローランズ)。向かいに住むモニカ(マリサ・トメイ)から6歳になる男の子の世話を頼まれ、久々に生活に張りがでてくる彼女だが、息子夫婦からはもうトシなんだから引っ越して同居しようと言われ、初老の身を実感せざるを得なくなる。
故ジョン・カサヴェテスの息子ニック・カサヴェテスが実母のローランズを主演に撮った監督デビュー作だ。
J・カサヴェテスとローランズによる作品は「グロリア」(79年)ぐらいしか観ていないが、その子供が演出家として世に出るとは月日の流れを感じずにはいられない。母親が主人公だからというわけでもないだろうが、このヒロイン像は実に等身大で無理がなく感心させられた。娘の代わりに新聞配達をやったり近所の子供の面倒を見たり、60歳になっても元気だけど、すでに自分は引退の時期に来ていることを感じとっている。
別居していた夫とヨリを戻したモニカ親子がミルドレッドを必要としていなくなったり、酒場で知り合ったトラック運転手(特別出演ジェラール・ドパルデュー)に恋してもイマイチ踏み込めなかったり、普段の彼女が快活であるだけに、身の程を知って寂しく引いてしまうヒロインの心情が痛いほどわかる。
ただ、そのあたりを突き放して描いていないのがポイントだ。周囲に流されず、しかし淡々と受け入れて生きる女性像は作者の母親を見る目と重なってくるのだろう。一生懸命に子供たちを育てても、愛情は“押しつけ”としか捉えられないこともあり、やがて彼らは出て行く。時は経ち、退場が近くなっても、それでも新しい人生を求めて旅立つミルドレッドに心からの共感を寄せている作者の姿勢は快い。
ローランズは貫禄の演技。M・トメイも自然体で悪くない。寒色系を活かしたフェルドン・パパマイケルのカメラが効果的だが、どことなく非アメリカ映画系のような印象を受けるのは、プロデューサーがパトリス・ルコントやエミール・クストリッツァの諸作を手掛けたルネ・クレトマンだからだろうか。
故ジョン・カサヴェテスの息子ニック・カサヴェテスが実母のローランズを主演に撮った監督デビュー作だ。
J・カサヴェテスとローランズによる作品は「グロリア」(79年)ぐらいしか観ていないが、その子供が演出家として世に出るとは月日の流れを感じずにはいられない。母親が主人公だからというわけでもないだろうが、このヒロイン像は実に等身大で無理がなく感心させられた。娘の代わりに新聞配達をやったり近所の子供の面倒を見たり、60歳になっても元気だけど、すでに自分は引退の時期に来ていることを感じとっている。
別居していた夫とヨリを戻したモニカ親子がミルドレッドを必要としていなくなったり、酒場で知り合ったトラック運転手(特別出演ジェラール・ドパルデュー)に恋してもイマイチ踏み込めなかったり、普段の彼女が快活であるだけに、身の程を知って寂しく引いてしまうヒロインの心情が痛いほどわかる。
ただ、そのあたりを突き放して描いていないのがポイントだ。周囲に流されず、しかし淡々と受け入れて生きる女性像は作者の母親を見る目と重なってくるのだろう。一生懸命に子供たちを育てても、愛情は“押しつけ”としか捉えられないこともあり、やがて彼らは出て行く。時は経ち、退場が近くなっても、それでも新しい人生を求めて旅立つミルドレッドに心からの共感を寄せている作者の姿勢は快い。
ローランズは貫禄の演技。M・トメイも自然体で悪くない。寒色系を活かしたフェルドン・パパマイケルのカメラが効果的だが、どことなく非アメリカ映画系のような印象を受けるのは、プロデューサーがパトリス・ルコントやエミール・クストリッツァの諸作を手掛けたルネ・クレトマンだからだろうか。

