元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ARGYLLE アーガイル」

2024-03-24 06:07:58 | 映画の感想(英数)
 (原題:ARGYLLE )これは面白くない。快作「キック・アス」(2010年)や「キングスマン」(2015年)を手掛けたマシュー・ヴォーン監督の手によるシャシンなので一応は期待したのだが、悪ふざけが過ぎてシラけてしまった。何よりキャラクター設定が低調で、感情移入がまったく出来ないのは痛い。しかも尺は無駄に長く、愉快ならざる気分で映画館を後にした。

 謎の国際シンジケートに立ち向かう凄腕エージェントのアーガイルを主人公にした痛快娯楽小説「アーガイル」のシリーズを執筆している売れっ子作家のエリー・コンウェイは、愛猫アルフィーと共にマイペースな生活を送る中年女性だ。新作の構想を練るため列車で取材旅行中の彼女は、突然に命を狙われる。それを助けたのがエイダンと名乗るスパイ。何でも、エリーの小説が偶然にも現実のスパイ組織の行動とシンクロしているとのこと。未来予知みたいな能力があるらしい彼女を抹殺するため、謎の組織は次々と刺客を送り込んでくる。エリーはエイダンと一緒に世界中を逃げ回りつつ、事態の打開を図る。



 とにかく、主人公の2人には魅力が無い。エイダンはスパイらしく身体はよく動くものの、何をやっても冴えないオッサンの域を出ない。エリーには実は重大な“秘密”があったのだが、それが明かされる後半は華麗に変身する・・・・と思ったら、最後まで垢抜けないオバサンのままだ。しかも、その“正体”とエリーの容貌とのギャップが却って広がり、観ていて痛々しくなってしまう。

 これはひょってして劇中フィクションの「アーガイル」の世界とのコントラストを狙ったのかもしれないが、アプローチが根本的に間違っている。架空のハナシとの“落差”を強調するには、エリーとエイダンの造型をリアリズムに振るべきだ。ところが本編は劇中劇以上にチャラけているので、ドラマにメリハリが無い。

 ヴォーン監督の仕事ぶりは低調で、テンポは悪くギャグは上滑り。CG処理画面は奥行きが無い。とにかく荒唐無稽なモチーフを繰り出せば、それだけでウケると思っているようだ。主役のブライス・ダラス・ハワードとサム・ロックウェルはミスキャストだろう。もっと見栄えの良い面子を持ってくるべきだった。

 ブライアン・クランストンにキャサリン・オハラ、デュア・リパ、ジョン・シナ、アリアナ・デボーズ、そしてサミュエル・L・ジャクソンと顔ぶれは多彩ながら、上手く機能していない。唯一良かったのがアーガイルに扮するヘンリー・カヴィルで、一時は“次期ジェームズ・ボンド役か”と噂されたように、颯爽と敏腕スパイに成り切っている。彼を本当の主役に据えた活劇編を作ってもらいたいと思う。

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