元・副会長のCinema Days

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「ニモーナ」

2024-03-25 06:08:03 | 映画の感想(な行)
 (原題:NIMONA)2023年6月よりNetflixから配信されたアニメーション映画。第96回米アカデミー長編アニメーション映画賞の候補作でもある。基本的にはよくあるファンタジー系のアドベンチャー物なのだが、設定がユニークで作劇のテンポも良く、最後まで退屈しないで付き合える。特に、ハリウッドのアニメ界に君臨しているディズニーやドリームワークスなどの作品とは一線を画するエクステリアが強く印象付けられる。

 舞台は中世風の架空の王国なのだが、テクノロジーは高度に発展していて、まるで未来世界だ。元首は代々の女王で、その祖先は国が出来る前に外の世界に生息していたモンスターを駆逐したという伝説が存在していた。孤児出身でありながら騎士学校を主席で卒業したバリスターは、騎士任命式の最中に起こった女王殺しの濡れ衣を着せられてしまう。公安当局から追われる身となってしまった彼は、逃走中に変身能力を持つ少女ニモーナと知り合う。意気投合した2人は一緒に真犯人探しを始めるが、事件の背景には陰謀が渦巻いていた。



 ハイテクな町並みに甲冑姿の騎士が多数行き交うという絵作りは、今までありそうであまり無かったやり方だ。キャラクターデザインは抽象的ながら動きはスムーズ。特に千変万化するニモーナの造型は素晴らしい。顔かたちだけではなく、動物にまで変身し、身体のサイズまで自由自在に調整出来る彼女はオールマイティな存在だ。しかし、元の姿であるティーンエイジャーの女子という佇まいは一貫しているので、どんなに無双ぶりを見せつけても違和感は希薄だ。

 バリスターも腕の立つ騎士で、何度か危機を突破する。彼にはアンブローシャスという盟友がいるのだが、その関係性が“今風”で絶妙だ。たぶんこのモチーフがあるから各アワードにノミネートされたのだろう。ただし、女王暗殺の黒幕の動機が今ひとつハッキリしなかったり、ニモーナの生い立ちも分からず、彼女と“同類種”が存在するのかどうか分からない点は不満だ。

 また王国の外の世界が具体的に描かれていないのも痛い。もっとも、ジェットコースター的に展開する後半の勢いの中ではあまり気にならないのも事実。ラストの扱いも気が利いている。ニック・ブルーノとトロイ・クエインの演出は達者。新奇な御膳立てをものともしないパワフルなドラマ運びが光る。

 ニモーナの声を担当するのはクロエ・グレース・モレッツで、彼女の小生意気な個性が良く出ている(笑)。バリスターに扮するリズ・アーメッドはパキスタン系イギリス人で、役柄の外観と見事にシンクロしている。クリストフ・ベックによる音楽も好調。観て損の無いシャシンと言える。

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