元・副会長のCinema Days

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「ありふれた教室」

2024-06-23 06:27:56 | 映画の感想(あ行)

 (原題:DAS LEHRERZIMMER)近年、我が国では教職員志望者の減少が顕著である。原因としては長時間労働と担当職務の野放図な増加などが挙げられ、要するに教育現場のブラック化が進んでいるということだろう。これは日本に限った話ではなく、2016年にはユネスコ(国際連合教育科学文化機関)が、初めて発展途上国に限らず世界レベルで教員不足に直面していると言及している。この映画の製作国であるドイツも例外ではないようだ。

 ハンブルグの中学校に赴任した若手教師のカーラは、熱心な仕事ぶりを見せて、受け持った1年生のクラスの生徒たちや同僚の信頼を得ていく。そんな中、校内で盗難事件が相次いで発生。カーラの教え子の中に犯人がいるのではないかという噂が立つ。徹底的な調査を進めようとする校長に反発したカーラは、独自に犯人を捜すべく職員室に隠しカメラを設置する。すると、学校事務員らしき人物が椅子に掛けてあった職員の上着から財布を抜き取っている動画が記録されていた。早速当事者に事情を聞くカーラだが、その事務員の息子はカーラのクラスの生徒でもあったのだ。居辛くなった生徒は登校拒否になり、カーラの立場も危ういものになっていく。

 そもそも、学内での盗難事件の捜査に現場の担任教師に過ぎない主人公が首を突っ込むこと自体がおかしい。しかも、記録された動画には犯人(らしき者)の顔さえ映っておらず、確証も無いままに向こう見ずな行動に走るカーラにはとても共感できない。しかし、彼女が捜査に乗り出さなければ事件はスムーズに解決したのかというと、それも極めて怪しいのだ。

 事実解明のためには警察当局の介入が必要になるだろう。だが、そのためには被害額と個々の犯行状況の確定が必要になる。それはハッキリ言って不可能ではないのか。ましてやヨーロッパでは複数の民族の子供が同じ学校で席を並べることが多くなっており、ヘタに動けば人種問題に発展する。それでなくてもモンスターペアレントなど、頭の痛い案件が山積している。こんな状況では、教職員のなり手が少なくなるのも当然だ。

 イルケル・チャタクの演出は冷徹でありながら、ラストに救い(のようなもの)を用意するなど、達者なところを見せる。主演のレオニー・ベネシュは、熱意が空回りして窮地に追い込まれていくヒロイン像を上手く体現していた。レオナルト・シュテットニッシュやエーファ・レーバウ、ミヒャエル・クラマー、ラファエル・シュタホビアクといった他のキャストは馴染みは無いが、皆良好なパフォーマンスを見せている。

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