元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「寝ても覚めても」

2018-09-17 06:31:27 | 映画の感想(な行)

 主演俳優のパフォーマンスが酷すぎる。東出昌大の大根ぶりは観る前から十分承知しているので、それなりの心の準備(?)が出来ていたが、ヒロイン役の新人・唐田えりかの演技はまさに壊滅的だ。

 彼女のセリフが棒読みであることは我慢するとしても、どんなシーンでも表情が全く変わらないのには参った。しかも身体のキレは皆無に近く、ぼーっと突っ立っている場面がかなり多い。ひょっとしたら“そういう演技指導”が成されているのかとも思ったが、彼女が出ているテレビCMでも同じ調子だし、これはそもそも(今のところは)実力が無いのだと思った次第。どういう経緯で起用されたのか、さっぱり分からない。

 大阪の美術館で、朝子は同い年の風変わりな青年・麦(ばく)と出会い、恋に落ちる。しばらくは楽しい日々が続いたが、ある時彼はフラリと出掛けたきり、帰って来なくなる。3年後、東京に移り住んだ朝子は、清酒会社に勤める亮平と出会う。彼は麦と瓜二つだった。しかし亮平の性格は麦とは正反対で、優しく真面目だ。戸惑う朝子だったが、やがて彼と付き合い始める。だが、亮平との結婚を意識した朝子の前に、突然麦が現れる。柴崎友香による同名小説(私は未読)の映画化だ。

 この映画は主役2人の仕事ぶりだけではなく、筋書きも褒められたものではない。冒頭の、朝子と麦との馴れ初めは不自然極まりなく、その後も自分勝手な態度を隠さない麦と懇ろになる朝子の内面を描くプロセスは不在。いつの間にか有名人になっている麦のことや共通の友人の消息を朝子が知らないのも噴飯物ながら、彼女が亮平を誘ってボランティアに打ち込む動機も示されない。

 朝子が麦と再会してからの展開に至っては、まさに(悪い意味での)驚天動地だ。もちろん“アクロバティックな話をデッチ上げてはいけない”という決まりは無く、それを観る者に納得させるだけの作劇の力と工夫があればオッケーなのだが、これが商業映画の監督デビュー作になる濱口竜介の腕前は、とても及第点には達していない。

 脇には瀬戸康史や山下リオ、伊藤沙莉、渡辺大知、仲本工事、田中美佐子といった“ちゃんと演技が出来る面々”が揃えられているが、東出&唐田との格差が強調されるばかりで、何とも言えない気分になってくる。なお、どういうわけか第71回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門の出品作である。なぜこの映画が“日本代表”に選ばれたのか不明だ。もっとマシな作品はあったはずだが。

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