元・副会長のCinema Days

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「ネクスト・ゴール・ウィンズ」

2024-03-01 06:09:07 | 映画の感想(な行)
 (原題:NEXT GOAL WINS)やっぱりこういうスポ根ものは、よほど作りが下手ではない限り、鑑賞後の満足感をもたらしてくれるのだ。しかも、実話というのだから中身は保証されたも同然。もっとも、細かいところを見ると弱い点はあるのだが、勢いと映像の賑やかさで乗り切っている。何も観たい映画が無いときも、取り敢えずはスクリーンに向き合えるような作品だ。

 アメリカ領サモアのサッカー代表チームは、2001年にワールドカップ予選史上最悪となる0対31の大敗をオーストラリアに喫して以来、試合で一つのゴールも奪えない。次の予選が迫る中、新たな監督に就任したのは、かつての名選手でU-20サッカーアメリカ合衆国代表の監督を務めたものの、粗暴な態度でアメリカを追われたトーマス・ロンゲンだった。素人同然の選手たちを前に面食らうトーマスだったが、何とかチームの立て直しを図ろうとする。世界最弱のサッカーチームが、ワールドカップ予選で起こした奇跡のような実話の映画化だ。



 ストーリーは定型的に進み、落ちこぼれ達が奮起して大舞台で活躍するというお馴染みのルーティンからは一切逸脱しない。つまり、新鮮味は無い代わりに安心感はある。さらに、南国らしい明るい映像と雰囲気は捨てがたいし、随所に挿入される脱力系ギャグも気分を害さずに受け入れられる。サッカーチームの面々はキャラが濃く、特にトランスジェンダーのフォワードの存在感は際立っていて、しかも本人の存在は“創作”ではない実録ベースだというのは驚くしかない。

 トーマスの別れた妻ゲイルは米国サッカー協会の役員で、すでに恋人がいるというのはキツいが、この元夫婦の間にいるはずの娘の消息が明らかになる終盤は慄然としてしまう。また、クライマックスの試合の動向は作り手としてはちょっと捻りを加えてみたつもりだろうが、ここはオーソドックスに仕上げた方が良かったと思う。キャストの一人としても名を連ねているタイカ・ワイティティの演出はピリッとしないところもあるが、許せるレベルだ。

 主演のマイケル・ファスベンダーは好調で、見事にサッカーのコーチになりきっている。オスカー・ナイトリーにカイマナ、デイヴィッド・フェイン、レイチェル・ハウス、エリザベス・モス、イオアネ・グッドヒューなど脇のキャストも万全だ。余談だが、米領サモアとサモア共和国とはまったくの別物であることを、恥ずかしながら本作を観て初めて知った。トーマス・ロンゲンのその後の実際の活躍も興味深い。

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