(原題:Mission:Impossible - Ghost Protocol )今回4作目となった本シリーズの中では一番面白い。もっとも今までの3作があまり上等ではなかったので、そこは割り引いてみる必要はあるが(笑)、それでも楽しめる映画であることは確かだ。何よりスパイ・アクションの王道を歩んでいるのが嬉しい。
本作でイーサン・ハント達と敵対するのは、堕落した世界を一度“清算”させるために最終戦争を起こそうとしている狂信的な一派だ。実際にはいくら原理的なテロリストだろうと、自分たちだけは無事でいることを最初に考慮するはずで、本作に出てくるような真に破滅主義的な過激分子なんか存在するはずもない。しかし、荒唐無稽な筋書きを堂々とデッチ上げるためには、これぐらい極端な敵キャラの設定がふさわしいのだ。
しかも、敵味方入り乱れてドタバタとやっているわりには、争奪戦の対象が核ミサイルの制御コードという、実に古風かつ在り来たりのシロモノである点も注目したい。つまりこれは、最初から“浮き世離れした与太話なのですよ”というエクスキューズを表看板に掲げていて、シチュエーションに対する突っ込みを排除しているのだ。
これは昔のジェームズ・ボンド映画と同等の方法論であり、ヘンにリアリズム路線に色目を使って往年のファンを落胆させている(と思われる)最近の007シリーズに代わり、そのポジションを見事にゲットしたような存在感を獲得している。世界を股に掛ける多彩な舞台設定や、次から次へと繰り出される新兵器・珍兵器の数々も楽しい。
実写映画はこれが初めてとなるブラッド・バードの演出は足腰が強くて長い上映時間を飽きさせない。活劇シーンはかなりよく考えられており、予告編でもフィーチャーされていたドバイの超高層ビル“ブルジュ・ハリファ”でのスタントをはじめ、砂嵐の中での手に汗握るチェイス、そしてクライマックスでの駐車場での格闘場面など、段取りとアイデアは特筆ものである。
主演のトム・クルーズは演技の基本パターンはいつも通りだが(爆)、今回はフィジカル面でのアピール度が高く、結構盛り上がる。ヒロイン役のポーラ・パットンも相変わらずキレイだし、コメディ・リリーフ担当のサイモン・ペグや強面部門のジェレミー・レナーも的確な役どころだ。
ハントは前作で結婚したはずが早々と彼女と別れてしまっているが、この伏線がラストの処理で効いている。お気楽な活劇編のようでプロットは意外と作り込まれており、その点でも感心。とにかく正月番組にふさわしい賑々しさと水準をクリアする質を確保した良作で、観る価値は大いにある。