元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ワイルド7」

2011-12-28 06:32:56 | 映画の感想(わ行)

 劇中に登場する公安調査庁情報機関(PSU)の本部が福岡市博物館になっていたのには吹き出してしまったが、それ以外には別に特筆すべき点もあまり見当たらない、低調な活劇編と言って良いだろう。60年代末から70年代にかけて少年誌に連載されていた望月三起也の同名漫画の映画化。原作は読んだことはないが、個人的には72年ごろに製作されたテレビドラマを何回か見た記憶がある。

 警視庁内に設置された、超法規的存在として悪人を問答無用で始末する7人の元アウトロー集団の“活躍”を描くものだが、こいつらの所行が犯人を見つけ次第に射殺あるいは殴る蹴るのリンチに遭わせるという無茶苦茶なもので、マジに呆れてしまったことを覚えている。さらに番組のラストに“バイクは正しく乗りましょう”というテロップが流れるに及んで、失笑してしまった。

 さて、この映画版での敵役はバイオテロを企てる犯罪者集団だが、飛行船に時限装置を載せて首都上空に侵入するという大がかりな段取りにも関わらず、緊張感のカケラも無い。犯人グループはすぐに特定されてワイルド7の面々が追い詰めるのだが、こいつらの多くが黒っぽい服装にサングラスという絵に描いたような悪党の風体であるのには脱力する。

 さらにワイルド7より先に標的を始末する謎のバイカーも出現するのだが、バイクに乗りながらも百発百中の射撃の腕を有しているわりには、どこでどうやってその技量を会得したのか全く不明。7人のメンバーの紹介も、主人公の飛葉以外はごくあっさりと触れるのみだ。各人得意技があるはずだが、それを大いに活かす機会もほとんどない。もちろん7人が力を合わせて任務に当たる動機付けなんて、スッポリと抜け落ちている。

 ならば肝心のアクションシーンはどうかというと、これも大したことはない。確かに、大型トレーラーから7台のバイクが飛び出す冒頭近く及び終盤付近の描写は見応えがあるが、他には何も目立ったところは見当たらない。ただのドンパチが延々と続くのみ。

 監督の羽住英一郎の腕は相変わらず凡庸で、深みのあるキャラクターが一人として存在しない。瑛太や椎名桔平ら出演者の多くが撮影のために大型バイクの免許を取得したらしいが、まあ“ご苦労さん”としか言いようがない。唯一印象に残ったのが、ヒロインを演じる深田恭子。今まで出演した映画の中では、間違いなく一番魅力的に撮られている。もっとも、それは絵柄的に目立っているだけの話で、映画のキャラクターとして練り上げられていないのが残念だ。
コメント
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