元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

KEFの新型スピーカーを試聴した。

2011-12-25 06:44:53 | プア・オーディオへの招待
 英国のスピーカーメーカー、KEFの新製品の試聴会に行ってみた。KEFといえば以前私がサブ・システム用に使っていたモデル(iQ3)も同社の製品である。KEFは1961年にロンドン南東のケント州に設立された会社で、かなり早い時期から日本に紹介されていたが、幅広く認知されるようになったのはUni-Qと呼ばれる同軸ユニットを搭載したリーズナブルな価格帯の製品をリリースするようになった10年ほど前からだと思う。

 今回は新たなコンシューマ用の上位ラインナップ“Rシリーズ”の中のR900と、ハイエンド機の“Blade”を聴くことが出来た。まずR900だが、メタル製のUni-Qドライバーを中高音用として配備し、低音用として20cmウーファーを2発取り付けた“Rシリーズ”の最上級機のフロアスタンディング型だ。なお、試聴会で使われたアンプはヴォリュームと入力切り替えをつかさどるプリアンプが国産ニューカマーのALLIONの製品、スピーカーを駆動するメインアンプが米国PASS社のものである。音源はTEACの高級機ブランドであるESOTERICのセパレート型CDプレーヤーと、SONYのノート型パソコンからデジタル出力されたものが起用されていた。



 聴いた瞬間に“おおっ、これは”と思わせる、左右に現出する広大な音場とその中から聴き手に一直線に飛んでくる音像が、スリリングな展開を見せるスピーカーだ。しかも、音色自体は明るく中高域のキメの細かさもある。確固とした質感に裏打ちされたスペクタクル性は、どんなジャンルでも楽しく聴かせそうだ。

 昔のKEFは英国の伝統(?)を踏襲したような柔らかさと滑らかさが身上の、どちらかといえばクラシック・ファン御用達みたいな感じがあったが、この“Rシリーズ”では完全に新しい領域に踏み出したような印象を受ける。聞けばチーフエンジニアが若手に世代交代したとかで、より広範囲なユーザーを獲得していこうという、攻めのマーケティングが窺える。価格はペア40万円程度だが、この音を勘案すると間違いなくコストパフォーマンスは高い。今回聴けたのはR900だけだが、下位のコンパクトなモデルも機会があれば聴いてみたいものだ。

 次に聴いたのが“Blade”だが、これはペアで300万円という高額商品。KEF発足50周年記念のフラッグシップ・モデルである。高さが160cmほどで重さも一本60kg近い。中高音用のUni-Qドライバーと、低域用ウーファーを2つずつ背中合わせにしたユニットを2基装備。計4つのウーファーを配置している。デザインは先鋭的で、現代美術のオブジェのようだ。



 音には期待したが、残念ながら試聴した印象はイマイチだった。前に鳴らしていたのR900に比べるとスケール感こそ大幅に増すが、分解能に難があり特に中低域の音のキレが鈍い。原因は明白で、試聴ルームが狭すぎるからだ。低音を左右に展開させる構造の本機は、もっと大きなリスニングルームが必要。しかも、同じ部屋に他メーカーの大型スピーカーも近接して置かれており、それらが共振して音を濁らせる懸念もある。もっと広々とした場所で聴きたかった。

 とはいえ、普段はなかなか聴けないモデルとじっくり向き合えたという意味で、今回の試聴会は有意義だった。新しい“Rシリーズ”は次なるヒット作になる予感がする。設置には広いスペースが必要なリア・バスレフ式のスピーカーなので個人的には導入は難しいが、ある程度大きなリスニングルームを用意できるユーザーにとってはベストバイの一つになる商品だろう。
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