元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ヴイナス戦記」

2010-04-16 06:46:55 | 映画の感想(あ行)
 89年作品。「クラッシャージョウ」や「アリオン」で知られる安彦良和原作・監督の劇場用長編アニメーションだ。人類の金星への移民が開始されてから72年後の西暦2089年、金星はアフロディテとイオンという二つの自治州に分割されていたが、ついに両者の間に戦争が勃発する。映画は、その戦いに巻き込まれた若者グループを中心に展開する。

 一言でいえば、どうにも凡庸な出来だ。とにかく感情移入出来るキャラクターが一人もいない。主人公の青年は無口に過ぎ、何を考えているのか分からない。声の出演(少年隊の植草克秀)のせいかもしれないが、こうも印象が暗いと盛り下がるばかりだ。あとの連中はギャアギャアとうるさいばかりで感心しないし、リーダー役の女の子も見た目は魅力的だが、どういう性格なのか不明だ。

 敵役の軍司令官やイオン国の元首だけは何がしたいのか理解できるのだが、感情移入にはほど遠い。「アリオン」などとは違って集団劇にしたのがまずかったのではないだろうか。脚本担当のSF作家の笹本祐一の趣味が前面に出ているのではないかと想像する。とにかく、登場人物もストーリーも広げすぎだ。

 その代わりに・・・・と言っては何だが、技術は凄い。アニメーションと実写との合成が上手くいっていない点を除けば、当時としてはほぼ完璧な技巧であろう。戦闘シーンやカーチェイスの場面は、そのディテールの細やかさや構図の大胆さに唸ってしまう。それらに限って言えば、大友克洋監督の「アキラ」よりも上を行くのではないかと思ってしまった。メカ・デザインもクォリティが高く、特に一輪バイクの走りにはびっくりしてしまった。まあ、一般の映画ファンには奨めないが、アニメのマニアにはアピールするところが大きいシャシンであろう。
コメント
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