元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ」

2010-04-24 06:48:41 | 映画の感想(ら行)

 意外にも楽しめた。私は元ネタになったTVシリーズは見たことがないし、甲斐谷忍による原作コミックも読んだことがない。それでも最後まで退屈せずに観ていられたのは、脚本が“程良いレベル”に収まっているからだと思う。

 荒唐無稽な設定を映画単品としてゼロから立ち上げる丁寧な語り口はない代わりに、それに付随する煩雑さも回避している。しかも、本作の筋書きはドラマにも漫画版にもないオリジナルのものだという。安易なTV版の焼き直しよりも、数段好感が持てる。

 冒頭、ドラマの簡単な概要を数分で紹介した後、いきなり対決に入るというくだりは、元ネタのファンを意識したものであると同時に、私のような一見の客をもアッという間に映画の中に引き込むスピード感を生む。孤島に連れてこられた11人の男女が不条理なゲームに挑むという、ケレン味たっぷりのシチュエーションに関してグタグタと状況説明から始めてしまうと、上映時間はいくらあっても足りない。観る側に考えるヒマを与えずに本題に入るという、この作戦は成功だ。

 彼らが参加するのは「エデンの園ゲーム」なるシロモノ。これが単純のようで、けっこうルールは込み入っている。一応の説明はあるが、駆け足気味で十分に把握出来ない。だが、作る側はそれを見越している。ゲームの進行によりルールの該当部分を再確認するというスタイルを取っているため、説明部分に余計な時間を与えずに済んでいるのだ。

 本作は観客に対して知恵比べを仕掛ける“コン・ゲーム”ではない。プロット面でかなりの突っ込みどころを残しながら、ジェットコースター気味にラストまで引っ張るという、アトラクション系に徹している。その割り切り方も潔い。各登場人物は適度に“立って”おり、悪趣味になる寸前のところで踏み止まるキャラクターの動かし方は、松山博昭監督の節度を守った姿勢が窺われる。

 主演の松田翔太はクールな持ち味が活きており、不貞不貞しくもどこか純情な詐欺師を好演。ヒロイン役の戸田恵梨香は“バカ正直な女子大生”という、実際にはまず存在しない(おいおい ^^;)役柄に果敢にチャレンジしており、なかなかに見せる。それにしても、笑うと歯茎が大々的に出てしまうのに可愛く見える女優というのは、この戸田ぐらいだろう(爆)。

 終盤には金銭万能の世相に対するプロテストも挿入され、それに派生して“人を疑うことの意味”にも言及している。ここが取って付けたように思えないのは、少なからず核心を突いているからだろう。またエンドクレジット後のエピローグも秀逸で、見事にテーマと呼応している。とにかく思わぬ拾い物の一編で、観て損はない。
コメント
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