元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「アヴァロン」

2010-04-21 22:44:23 | 映画の感想(あ行)

 2000年作品。荒廃した近未来、非合法の仮想戦闘ゲーム“アヴァロン“に熱中するあまり殺戮と自らの死を繰り返す興奮から抜け出せない若者が大量発生したある国を舞台に、最強のパーティを自らの失敗で解散させてしまった過去を持つ女戦士のバトルを描く。

 ポーランドでロケされ、キャストも現地で集められているが、監督は押井守である。少し前まで“押井守に実写は撮らせるな”という原理原則が邦画界にあったらしいが(ねえって、そんなの ^^;)、今や得意のアニメーションでも気合いの入った作品をリリースできない彼の、凋落を暗示させる何とも弱体気味の映画だ。

 現実の中の虚構(ゲーム)、虚構の中の現実といった、すでに手垢にまみれた仕掛けを何の芸も工夫もなく差し出すのみ。第一、舞台となる近未来社会の構造等がほとんど説明されていないのには閉口する。これでは登場人物たちがゲームにのめり込んでいく理由が、“単に面白いから”ということ以外に存在しなくなり、いくら深刻な表情をしてみても、“それがどうした”としか思われず、ドラマ自体が寒々となるばかり。

 出てくるキャラクターには全然魅力なし。冒頭の戦闘シーンとメカ類、モノクロに近い画面で展開するCG処理などには見るべきものはあるが、困ったことにこういう“一見先鋭的な画面”は古くなるのも早いのだ。大仰な音楽も願い下げ。撮影監督のグジェゴシ・ケンジェルスキだけが的確な仕事で唯一気を吐いている。
コメント
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