元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「カタクリ家の幸福」

2010-02-21 07:21:19 | 映画の感想(か行)
 2001年作品。人里離れた山中でペンション経営を始めた一家が、数々のトラブルに巻き込まれながらも、何とか折り合いを付けていく様子を描くミュージカル風味の喜劇。元ネタは韓国映画の「クワイエット・ファミリー」で、山岸きくみが脚色を担当。監督は三池崇史である。

 ひとことで言って、つまらない。ギャグは寒いし、展開も行き当たりばったり。同じ“ミュージカル仕立てのお笑い編”でも、森田芳光の「ピンクカット/深く愛して太く愛して」や黒沢清の「神田川淫乱戦争」等の足元にも及ばない。だいたい、元になった「クワイエット・ファミリー」自体が凡作なので、いくら策を弄しても何とかなるものではないだろう。



 キャストは主演の沢田研二をはじめ、松坂慶子、西田尚美、武田真治、丹波哲郎と、けっこう豪華。ただし、彼らの存在感を持ってしても、この低調ぶりは如何ともし難い。

 今回つくづく思ったのは、三池崇史監督ってのは“思い付き”で作品を連発する作家だということだ。よく言えば好奇心と精神力が旺盛。悪く言えば粗製濫造(たまに面白いのもあるが)。でもそれ自体が否定されるべきことではない。カツドウ屋にとってエネルギッシュなのはいいことである。ただし不幸なのは、彼のような作家が他にほとんどいないことだ。

 この映画にしても、かつての東映任侠映画の同時上映(添え物)として公開されたなら、たとえ面白くなくても観客は文句を言わないはず。だが、どう見たってC級プログラム・ピクチュアでしかない本作がミニシアターとはいえ堂々一本立て興行してしまうと、笑って済ますわけにはいかないのだ。プログラム・ピクチュアという方法論そのものが滅びかけている邦画界では、彼は延々と一人相撲を続けるしかないのだろうか。困ったことである。
コメント
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