元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

最近購入したCD(その18)。

2010-02-13 06:50:28 | 音楽ネタ
 ここ何週間か頻繁に聴いているのは、ニューヨークはマンハッタンの高級住宅街であるアッパーウエスト出身のインディー系バンド「ヴァンパイア・ウィークエンド」の2枚目のアルバム「コントラ」だ。とにかく音のクォリティが高い。彼らのファースト・アルバムも試聴したことがあり、悪くない出来だと思ったが、今回のサウンドは目を見張るような成長を遂げている。米ビルボードの総合チャートの一位も納得だ。



 全編に渡ってアフロ・ポップの影響を強く受けている。それに60年代風ポップスとパンクのテイストを織り交ぜ、他にもスカやら中近東サウンドも取り入れて、ダンス・ミュージックのノリでイッキに聴かせてしまう。ハイトーンのヴォーカル、小気味良いギターのリフ、効果的なシンセサイザーの挿入等、音の組み立て方は巧妙で隅々まで神経が行き届いている。メンバー全員がコロンビア大出身のインテリで、サウンド面でもアカデミックな感じが満載だが、小難しさは皆無。実に分かりやすい。誰にでも奨められる上質のポップ・アルバムである。

 日本のジャズの旧譜も買ってみた。作曲家としても知られたピアニストの鈴木宏昌が、自身のトリオを率いて吹き込んだ「プリムローズ」というアルバムである。録音は78年で、一部のコアなマニアから“幻の名盤”と呼ばれているものらしい。近年ディスク・ユニオンが“昭和ジャズ”と銘打って復刻したシリーズの一枚である(原盤はテイチクレコード)。私は予備知識なしでジャケット・デザインの清涼さに惹かれて購入したのだが、これがなかなかに聴かせるCDだ。



 曲はすべてオリジナルだが、どれもしなやかで硬質な旋律美に溢れている。分かりにくさはまったく無い。流れるようなピアノのフレーズ。ベースの井野信義、ドラムスのスティーヴ・ジャクソンのサポートも強靱だ。演奏の方向性としてはストレートアヘッドに尽きる。何の衒いもなく、ジャズという音楽の形式を追い求めるスタイルに好感を覚えてしまう。たぶんこのディスクが作られた時期の日本は、ある種の“ジャズの本場”だったのだろう。マスタリングが上手くいっているらしく、録音は良好だ。なお、同トリオによる「コルゲン・ワールド」(76年録音)というCDも同時購入したが、これも聴き応えがあった。

 スウェーデン出身の女性歌手、スス・フォン・アーンのアルバム「ペーパー・ムーン」は間違いなく近年のジャズヴォーカル作品の中では上位に属する秀作だと思う。曲目はスタンダード・ナンバー中心だが、ジョン・レノンやジョニ・ミッチェル、ドナルド・フェイゲンのナンバーも意欲的に取り上げ、幅広いリスナーにアピールできる内容だ。バックはフルオーケストラで、なかなかゴージャスである。



 彼女の魅力はその声質だ。実にハスキー。しかし泥臭さや重さは前面に出ない。ウェットで艶があり、ヴァラエティに富んだ曲目にもフレキシブルに対応。都会的で、いつまでも聴いていたい奥行きの深さがある。北欧人にしてはブラック・コンテンポラリー的な展開が目立つが、彼女は子供の頃にアフリカで過ごしていたらしく、黒人のフィーリングも完全に自分のものにしているようだ。録音は素晴らしく、低いところから高域までレンジは良く伸びていて、音像は明瞭だ。ヴォーカルと楽器群との距離感も的確である。このレーベル(スパイス・オブ・ライフ)には好録音が目立ち、今後もチェックしていきたい。
コメント
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