元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「イシュタール」

2010-02-18 06:22:12 | 映画の感想(あ行)

 (原題:ISHTAR)87年アメリカ作品。まったく笑えない喜劇であり、スリルもサスペンスもない活劇編であり、恋愛沙汰も友情ネタもないドラマである。しかし、これはこれで存在価値は(わずかながら)あると思う。これは要するに、冗談のノリで作ってしまった映画だ。

 有名俳優とスタッフが一流ホテルのバーで飲みながら与太話をしたついでに、フッと頭に浮かんだジョークを“これだけの面子を集めるからカネ出せや”と製作会社にねじ込んでデッチあげられたシャシンと言っていいだろう。ダスティン・ホフマンとウォーレン・ビーティが、フランスからイザベル・アジャーニまで呼んできて、あのエレン・メイがメガホンを取った話題作・・・・といった受け取り方をして作品に臨んだりすると“なんじゃこりゃー!”である(笑)。

 まあ、よく考えると、いくら同じ“有名スターが顔を揃えたコメディ”でも、昔の「底抜けシリーズ」や「珍道中シリーズ」は、お笑いが得意な俳優達が真剣にネタ合わせをやって、観客の腹の皮を捩らせるように腐心した“真っ当な喜劇”であった。対して本作は全然違う。テレビのトークショーの延長線上にあるような、限りなく軽佻浮薄なスタンスで撮られている。つまりは“ヤラセ”が見えてしまうのである。

 だから、この映画を観るにはあらかじめ“こういう映画なのだ”と了解するしかない(そうすればD・ホフマンがヘタな歌声を披露する場面も、少しは笑える ^^;)。もちろんそれは少なくとも開巻20分以内には気が付くべきで、それをスッ飛ばしてしまうと“カネ返せ!”の状態に陥ることになること必至だ。深酒をして帰宅した夜に、テレビ画面でザッと流しておくには絶好の映画かと思う。

 なお、撮影監督は大御所ヴィットリオ・ストラーロである。だが、普段の彼の仕事で見られる美しい映像は皆無。たぶん彼も“お遊び気分”で本作に付き合ったのだろう。どうせならばワン・シーンにボッブ・ホープの顔でも出しておけば、もっとジョーク気分が盛り上がったと思う(爆)。
コメント
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