元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「96時間」

2009-09-08 06:26:54 | 映画の感想(英数)

 (原題:Taken )何だか、頭が悪そうな映画だ。ギャングに娘を誘拐されたかつての情報部エージェントのおっさんが、単身カリフォルニアからパリに乗り込み、程度を知らない大暴れをするという本作、その設定からして噴飯ものである。

 主人公は昔は秘密工作員として腕を振るったのかもしれないが、今はただの一般市民に過ぎない。それがヨソの国に出掛けて、情け無用の所業の数々実行できる道理なんかないのだ。一応現地の警察は出てくるが、まるで無力。フランス政府の情報部にも出番は与えられていない。まさに愕然とするような御都合主義である。

 しかもこのおっさん、愛する娘を拉致されて頭に血が上っているのか、相手に対してまるで容赦しない。交渉だの駆け引きだのは一切無し。敵を見付けたら、たいていの場合瞬殺。ちょっと情報を持っている奴ならば、捕まえて即拷問。もちろん吐かせた後は惨殺。ピンチらしいピンチもなく、出てくる敵をシューティング・ゲームよろしく殺して殺して殺しまくる。

 このパターンはどっかで見たと思ったら、スティーヴン・セガール主演の「沈黙」シリーズによく似ていることに気付いた(笑)。ただし、少なくともセガール御大には観客を唸らせるフィジカル面での優位性がある。対してこのおっさんは見た目がフツー過ぎる。別に外見に特徴が無くても大向こうを唸らせるようなアクションを展開してくれれば文句はないのだが、これが実に凡庸。メリハリがなく、行き当たりばったりの立ち回りでお茶を濁すのみ。カーアクションも乱闘場面も銃撃戦も“この映画じゃないと観られない”といったレベルには全然達していない。正直、画面内ではバタバタと派手なシーンが連続しているにもかかわらず、中盤以降は眠気を催してしまった。

 さらに盛り下がるのは、誘拐される高校生の娘が、底抜けに馬鹿であること。あれほど親が注意したのに、旅先で知り合った若い男に簡単に滞在場所を教えてしまう間抜けぶりには脱力。ハッキリ言って自業自得だ。しかも演じる女優が大して可愛くない(爆)。

 製作・脚本がリュック・ベッソンである点が興行側のセールスポイントらしいが、彼は映画作家としては“終わって”いる。監督のピエール・モレルとかいうのも、才気のカケラも感じられない。こんなシャシンに付き合わされたリーアム・ニーソンやファムケ・ヤンセンなどの俳優陣も良い面の皮だろう。せめてパリの名所旧跡でも紹介して、観光気分を味あわせてもらいたかったが、それもナシ。要するに、あまり存在価値のない映画である。
コメント
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