元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「シカゴ」

2009-09-07 06:16:46 | 映画の感想(さ行)

 (原題:CHICAGO )2002年作品。久々にミュージカル映画の醍醐味を堪能した。20年代のシカゴを舞台に、殺人犯であるヒロインがセンセーショナルな法廷戦術に打って出るだけではなく、スターの座をも射止めてしまうという筋書きは確かに御都合主義に過ぎる。しかしミュージカルは物語が単純でいい加減でなければならない。その分、歌と踊りでカバーして無理矢理に観客を納得させるのがミュージカルの王道だ。

 事実、昔のMGMミュージカルは、話の内容なんてほとんどないのに、あれだけ楽しかったではないか。逆に、アラン・パーカーの「エビータ」が失敗したのは、ストーリーに必要以上に“意味”を持たせようとしたためだ。

 冒頭“5,6,7,8!”というカウントと共に「オール・ザット・ジャズ」が威勢よく始まると、観客をアッという間に目眩くミュージカルの世界に引きずり込む。その絶妙の演出リズムで観る者をノセてしまえばあとはラストまで一直線。それからは“ストーリーがどうの”という小難しい問題は雲散霧消し、映画の焦点はキャストのパフォーマンスと振り付けと楽曲の出来に全て絞られる。そしてそれらをクリアしさえすれば観ている方は大満足なのだ。

 ボブ・フォッシーによる元ネタをテンポ良く綴るロブ・マーシャルの演出も好調ながら、吹き替えなしでのキャストの頑張りは凄い。特にキャサリン・ゼタ=ジョーンズのパフォーマンスは素晴らしく、一人二役で踊ってみせる場面には圧倒させられた。弁護士役のリチャード・ギアはタップダンス等にぎこちなさも目立つが、下着姿での登場と胡散臭さ全開の存在感には嬉しくなる。

 この二人に比べると主演のレニー・ゼルウィガーは線が細いけど、キャラクターと演技力で十分見せてくれる。振り付け面も申し分なく、中でもリチャード・ギアが腹話術師よろしくゼルウィガーを操ってみせるシーンは最高の盛り上がり。とにかく、最初から最後まで見どころ満載の仕上がりで、オスカー受賞も納得の快作だ。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする