元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「キラー・ヴァージンロード」

2009-09-18 06:31:29 | 映画の感想(か行)

 上野樹里の存在だけが、何とか最後まで映画を保たせていたという印象だ。岸谷五朗の初監督作(脚本も担当)であるこの映画は、とにかく作劇がお粗末だ。何より、作者が“こうやると、観客は面白く思うはずだ”と一人で勝手に合点している様子がミエミエなのである。例えるならば“ジョーク言ったぞ、さあ笑え!”という三流芸人みたいな思い上がりが前面に出ている。

 結婚を目前に控えた冴えないOLのヒロインが、ひょんなことからアパートの大家を誤って殺害。死体をスーツケースに詰めて富士の樹海に“捨て場所”を求めるが、そこで出会ったのが自殺願望がありながら肝心なところで死にきれないというヘンな女。人を殺した女と、人から殺されたい女との珍道中が始まるが、それからの筋書き・段取りが退屈極まりない。

 おかしな暴走族とのからみや若い警察官との追いかけっこは必要以上に長く、謎の凶悪犯二人組のエピソードは不良消化で、ヒロインの祖父との思い出話なんか話のツボが見えない(いや、実際は見えているのだが、見せ方が平板に過ぎるため、結果として見えないのと一緒)。いわばつまらない話をカバーしようと、さらにつまらぬ話を重ねたような工夫の無さが鑑賞意欲を減退させる。

 そもそも、冒頭のミュージカルシーンからしてダメだ。振り付けも画面処理も素人レベル。楽曲もパッとしない。それでもこのミュージカル路線を全編引っ張ってくれれば愛嬌があったのだが、これ以後はショボい歌と踊りのシーンが数回出てくるだけで、ラスト近くになると影も形もない。ならば同様に最初の方でしつこく挿入される不条理的ヘンタイ路線はどうかというと、これもいつの間にやら立ち消えだ。ドラマツルギーに一貫性が無く、行き当たりばったりに与太話を垂れ流す。世間を馬鹿にしているとしか言いようがない。

 それでも、我が国が誇る若手コメディエンヌ・上野の頑張りは観客を中座させないだけの価値はある。出てくるだけで周囲におちゃらけの空気を充満させる存在感は、いつもながら大したものだ。対してヒドいのが相手役の木村佳乃。以前からも言ってるが、木村は女優を辞めた方が良い。彼女のように色気も演技力もスクリーン映えするオーラもない“単なるタレント”が出る余地は、本来日本映画にはないのだ。

 それと気になるのが、あまり意味もなく出てくる眞木大輔。またしてもEXILEのメンバーの登場だが、当方はこのグループにはこれっぽっちの興味もない。映画に出演させる価値のある俳優は他にもたくさんいるはずだが、今回どうして彼なのか、実に理解に苦しむところである。
コメント
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