元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「カリートの道」

2009-02-15 07:23:29 | 映画の感想(か行)
 (原題:Calito's Way)93年作品。ブライアン・デ・パルマ監督とアル・パチーノが「スカーフェース」(83年)以来10年ぶりに組むギャング映画。公開当時はけっこう評判が良く、どんなにいい映画かと期待して劇場に足を運んだ私を待っていたものは、果たして何だったのだろうか。

 パチーノ扮するギャングの大物が5年ぶりに刑務所から出てくる。するとすっかり街は別の奴らに牛耳られており、極道稼業のはかなさを感じた主人公は足を洗う決意をする。だが、そこは昔気質のヤクザ。世話になった仲間、特に出所を助けてくれた弁護士(ショーン・ペン)への義理を忘れるわけにはいかない。周囲への借りを返さなければ安心してカタギにもなれないと、少しずつ悪事の片棒を担ぐうち、いつの間にか泥沼にはまっていき、もはやいっぱしのワルと化した弁護士の頼み引き受けたのが運のつき。別のギャングとの抗争に巻き込まれていく。

 あきれたのは、ストーリーが100%読めることである。話自体は昔から日本のヤクザ映画でも何百回と繰り返されたパターンで、しかも映画の冒頭に物語の最後の場面を持ってくることから結末もわかっており、意外性のカケラもない作品である。別に使い古された話が悪いというわけではないが、なぜこれを今やらなくてはならないのかさっぱりわからない。

 しかも、読めるのはストーリーばかりではない。アクション・シーンの段取りから間の取り方、カメラワークまで含めて、すべて底が割れている。極めつけは、例の“階段落ち”を今回も懲りずにやっていることで(今回はエスカレーターだが)、他にやることはないのかと思ってしまう。ここまでくると、落ち目の芸人がやる一発芸とそう変わらないではないか。

 デ・パルマ監督のその前の作品「レイジング・ケイン」が今までのネタの大判振る舞いなら、今回は“ネタがないから開き直ったぞー”という感じか。「スカーフェース」もあまり好きな映画じゃなかったが、脚本がオリヴァー・ストーンだけあって、何やら病的な迫真性がドラマを引っ張っていた。しかし「カリートの道」には何もない。

 パチーノのは演技は彼としては凡庸なレベル。印象に残ったのはけっこう大胆な肢体を見せるヒロイン役のペネロープ・アン・ミラーぐらいか。全篇に流れる70年代ポップスも必然性がなく、曲目も超ダサイ。同じ70年代ロックを使った「レザボアドッグス」のカッコ良さとは雲泥の差だ。あまり観る価値はない。
コメント
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