元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「感染列島」

2009-02-08 07:11:56 | 映画の感想(か行)

 意外にも楽しめた。これは監督の瀬々敬久の持ち味によるところが大きい。瀬々のスタイルの特徴は“熱くならない”ことだ。対象から一歩引いてクールに捉える。これが撮る映画の題材によってはマイナスに作用することがあるが、今回は上手くマッチした。

 新型の感染症の大々的なアウトブレイクというパニック映画の一種とも言える本作で、もしも作者が熱くなりすぎてケレン味に次ぐケレン味、さらに血管切れそうな絶叫に次ぐ絶叫で押しまくったならば、これはもう鬱陶しくて観ていられない。大風呂敷広げたような設定(まあ、考えてみればそうでもないのだが)だからこそ、冷静な進行役としての演出が不可欠になってくるのだ。

 もっとも、よく見ると突っ込み所は多々ある。まず、大流行の原因となった“張本人”は事態がこうなることを予想しなかったのだろうか。それも素人ではなく専門家の端くれなのだから呆れてしまう。そして最初は鳥インフルエンザと間違われるのだが、これはどう考えても鳥フルの症状ではないだろう。エボラ出血熱か何か、もっと別の疾病であることは明らかである。当局側がいち早く患者の隔離に動いたのも納得できない。現行法ではそう簡単に非常措置は取れないと思うのだが・・・・。

 しかし、これらの疑問点も必要以上に細部を強調しないサラリとした演出と、時折挿入される荒廃した街の風景などのインパクトでかなりのレベルまでカバーしきれていると言って良い。脇のキャラクターが立っていて、医師役の佐藤浩市やカンニング竹山、事態の収拾に尽力する科学者役の藤竜也、看護婦の妻を見守る夫に扮した田中裕二などは好演だ。

 ただ、主演の妻夫木聡は良いとして相手役に檀れいというのはミスマッチだった。実年齢以上に年の差が感じられ、互いに対等の恋愛対象に成り得ていないように見える。もっと納得できるようなキャスティングが望まれた(-_-;)。

 とはいえ、話自体はフィクションでも明日にでも起こりうるかもしれない素材を選んだ製作側の目の付け所は悪くない。もっとも、この映画のようなことが勃発するのは日本ではなく中国である可能性が高い。それどころか、あの国の秘匿体質を考えると、すでに破局の萌芽は生じているのかもしれないのだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする