元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「悪夢探偵2」

2009-02-03 06:33:39 | 映画の感想(あ行)

 前作よりも落ちる。他人の夢にサイコダイブする特殊能力を持つ主人公という荒唐無稽な設定ながら、パート1はひとつの難事件の解決という明確な目標に向かってドラマは進んでいた。たとえ相棒の女刑事を演じた役者が超大根であっても(笑)、ドラマツルギー自体にブレはないので観る者は安心して物語り世界に入り込めた。しかし、このパート2は焦点がまるで絞り込めていない。

 悪夢探偵・京一が、いじめていた相手が夢に出てきてうなされると訴える女子高生の依頼を、例によって嫌々ながら引き受ける。やがて彼女とつるんでいじめに荷担していた級友たちが謎の死を遂げるに及んで事態は風雲急を告げることになるのだが、話はその筋道へ収斂していかない。

 いじめを受けていた女生徒が、今は亡き京一の母親のキャラクターと似ていることに気が付いた彼は、不遇な子供時代を回想することになる。しかし、この部分はやたら長いばかりで事件そのものとは最後までシンクロしないのだ。そればかりか怖がらせたいのか失笑させたいのか分からないような弛緩したイメージばかりが並び、観る方は脱力するしかない。気が付いてみれば、事件の真相は藪の中。別に滔々と説明する必要はないが、暗示も何もないのではフラストレーションが溜まるばかりだ。

 さらには依頼人の女子高生がラスト近くには“ああいう風”になってしまうのも意味不明。まさか次作で彼女を京一の“助手”として起用するための下準備ではないかと、いらぬ勘繰りもしたくなる。元より塚本晋也の作品に明確な起承転結の構図を期待しても仕方はないのだが、これだけ話のまとまりに欠けるとは、いくら何でも失敗だろう。

 主演の松田龍平は、まあいつも通りだ。特筆すべき点はない。母親役の市川実和子はさすがにこの手の作品にはうまく溶け込み、屹立した持ち味が全開だ。常軌を逸した部分と、ふと垣間見せる優しさとが絶妙のコンビネーション。だが、見立ての悪いストーリーの中ではその健闘ぶりも空回り気味なのは残念だ。ヒロインを演じる三浦由衣は影のある不敵な面構えが印象的な新鋭。たぶん監督のお眼鏡に適っての起用だろうが、楽しみな人材ではある。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする