元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「チェ 39歳別れの手紙」

2009-02-14 06:28:45 | 映画の感想(た行)

 (原題:Che Part Two)前回同様、面白くない。キューバ革命後、政府の要職を放り出し、革命のグローバルな展開を狙ってボリビアで活動を続けていたチェ・ゲバラ(ベニチオ・デル・トロ)の死を描く伝記映画第2部だが、歴史のうねりが個人を飲み込んでゆくようなダイナミズムはまったく感じられない。それどころか、観ていて“歴史の勉強”にすらならない。

 たぶんゲバラは机上の知識と論理以外には“戦い”しかなかった人物なのだろう。キューバで革命政府が発足した後の、閣僚としての実務運営には全く向いていなかったと思われる。だから、次なる“戦い”を探して各地を転々としたのだ。そんな彼が目を付けたのがボリビアで、横暴な政府と貧困を強いられる民衆という、革命にはもってこいの環境が整っていると思い込んだ。

 しかし、十分な事前のリサーチの不足により失敗。国民の理解は得られず、既存の反政府組織との意思の疎通は上手くいかないばかりか、せっかく募った仲間も次々と脱落してゆく。ただし、映画はゲバラのそんなディレンマを深く描こうとはしない。単に山の中を移動し、時々は戦闘行為はあるものの、ただ漫然と終末に向けてのカウントダウンが進むだけだ。

 ドラマ運びに山も谷もなく、淡々と進む平板なドキュメンタリー・タッチの映像に、観ているこちらはイライラするばかり。おそらくは作者のスティーヴン・ソダーバーグにとってのゲバラ像は自身の中で“完結”していたのではなかろうか。愛着と尊敬を集めた革命のカリスマとしてのゲバラは、ソダーバーグが本作の企画を練っていた段階で、映画として活写すべき存在というより、個人的趣味や研究の対象でしかなくなってきたのだろう。だからこのような密度の極めて薄いシャシンしか残せなかったのだ。

 そういえば十代の頃、テレビの洋画劇場でリチャード・フライシャー監督による「ゲバラ!」という作品を見たことがある(69年製作)。主演はオマー・シャリフでカストロにジャック・パランスという重量級のキャストで、音楽はラロ・シフリンだった。アメリカ側から描いていたとはいえ、けっこう面白かったことを覚えている。ああいう平易な捉え方がこの素材を活かせる方法ではなかっただろうか。
コメント
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